2005年3月28日(月)「しんぶん赤旗」

職業安定所に求人票

働く場所は戦地イラク

月50万円以上 元請けは隠す


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イラク国内を就業場所として公開された求人票。

 建設関連業者を対象に、戦地イラクで働く日本人を高給で募集する「求人」活動が日本国内でおこなわれていることが本紙の調べでわかりました。ハローワーク(職業安定所)に求人票として公開されているものもあります。米軍は戦争の「民営化」を進め、イラクでも軍需企業が民間人を雇用する形で、戦争体制に組み込んでいるだけに、異常な「求人」の背景解明が求められます。

建設・商社名も

 二月二十三日、ハローワーク長崎が「就業場所」を「イラク」とする求人票を公開しました。長崎市内の会社からの求人でした。

 それによると、仕事内容は「土木工事の手元作業(水道工事、学校建設工事等)」。「パスポート取得可能な方」が対象で、雇用期間は三月二十日から九月二十日までの半年間。賃金は月に「五十万円〜六十万円」。イラクまでの旅費、宿泊費は会社が負担し、保険については「元請け会社が民間保険へ加入する」としています。

 求人はインターネットでも公開され、ハローワーク長崎によると、長崎、岡山、京都などから問い合わせがあり、二人を会社に紹介。ところが、同社の申し入れで三月十日ごろ求人が取り下げられました。

 この業者は本紙の取材に「話は大阪の会社から受けた。実際に働く場所は米軍やオランダ軍がいる居住区で安全な所だと聞かされた。大阪と東京で説明会が行われることになっていたが、話は途中で終わった」と回答。そしてこう続けました。

 「大阪の業者の上には大手商社やゼネコンがいると聞かされたが、イラク求人の本当の元請けが誰なのか、私にもわからない」

 別の長崎市内在住の建設業者は、昨年十二月半ば「一人につき七十万円を出す。イラクに行ける作業員を集めてほしい」と他の業者から持ちかけられました。

 給与は二週間で七十万円。イラクで二週間仕事をしたら、一週間は日本に戻るサイクルで、交通費・食費・宿泊費、作業服も発注者持ち。パスポートを取得することが条件でその経費も発注者が負担する――というものでした。

 作業場所はイラク国内というだけで、内容は「災害復旧」と説明されました。

 この業者は知り合いに声をかけて三十人近くを集めました。しかし、正月明けにイラクでテロが発生、「今は延期になっている」といいます。

 「話を持ちかけてきた業者は、元請けがだれなのか一切教えてくれない。こうした話は一つのルートだけじゃなく、佐世保の米軍基地筋からも聞いたことがある」と語ります。

危険な事態も

 かつてイラクで日本のゼネコンの下請けとして仕事をしたという建設関連会社の幹部はこういいます。

 「米軍がバグダッドに入った直後の一昨年、ゼネコンや外務省からイラク復興を手伝ってくれといわれたことがある。発注の大本には米国企業や米軍がいると、米軍基地で働く関係者から聞かされた」

 米軍はベトナム戦争当時、日本人を直接雇用し、領海外で日本人射殺事件も起きました。いまイラクでは米軍需企業が「復興」事業を“受注”しており、日本人労働者を巻き込むとすれば危険な事態です。

 外務省は「イラクについては危険であり、退避勧告を出しているが、法的拘束力を持つものではない」としています。


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