2005年3月26日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「国民保護」基本指針

何のための「備え」なのか


 政府は、「国民保護法」にもとづく「国民の保護に関する基本指針」を閣議決定しました。「国民保護法」とは、アメリカの戦争を支援する有事関連法の一つであり、武力攻撃から国民を保護するための避難・救援を名目に、国民を戦争に強制動員するものです。「基本指針」にもとづき、指定行政機関(省庁など)や都道府県は国民保護計画を、指定公共機関(電気、ガス、運輸、通信、医療、報道などの事業者)は国民保護業務計画を作成します。

“後顧の憂いなく”

 「基本指針」は、武力攻撃を、外国部隊の上陸侵攻、特殊部隊の攻撃、NBC(核、生物、化学兵器)をふくむ弾道ミサイル攻撃、航空機攻撃に類型化し、対応措置を示しています。しかし、どのように攻撃されるというのでしょうか。「基本指針」も「一概に言えない」としているように、現実の問題としてはほとんど想定できないものなのです。

 にもかかわらず、都道府県には、「当直等二十四時間即応可能な体制確保」を義務付けています。市町村にも「当直等の強化」を求めています。所有者の同意を得ない土地・家屋・物資の強制使用、運送業者の輸送動員の措置など、強制動員のしくみを示しています。NBC攻撃への対応訓練や資機材を使った実践的訓練も強調しています。戦争に備えるのは当然という「戦争意識」を持たせ、戦時動員体制をつくるのがねらいです。

 国民の自由と権利を制限する問題も重大です。「基本指針」は、「制限は必要最小限のもの」などとしていますが、「集会や報道はあくまでも公共の福祉に反しない限り」(二〇〇二年五月九日福田官房長官=当時)というのが政府の見解です。戦争反対の声や運動が抑圧され、指定公共機関のNHKや民放も「基本指針」にそった報道計画の枠内で、戦前の“大本営発表”の二の舞いになる危険があります。

 昨年十二月に政府が決めた「防衛計画の大綱」は、安全保障の目標として、「我が国に直接脅威が及ぶことを防止し、脅威が及んだ場合にはこれを排除する」、「国際的な安全保障環境を改善し、我が国に脅威が及ばないようにする」、をあげました。「基本指針」は、「国民保護」の体制をこの二つの「脅威」に備えるためにつくるとのべています。

 日本にたいする突然の「直接脅威」については、「基本指針」自身が「可能性は低下」といっています。

 「国際的な安全保障環境を改善し、我が国に脅威が及ばないようにする」ということが主で、想定しているのは自衛隊イラク派兵のようなことです。アメリカに協力して国際テロや大量破壊兵器の脅威とたたかうために海外まで出動するのは、日本の安全のためだというのです。しかし、アメリカいいなりに海外派兵をすすめ、アメリカの先制攻撃戦争に参加することこそ、日本を危険にさらすものです。「国民保護」の名で、国民を強制動員するしくみをつくるのは、自衛隊が「後顧の憂いなく」海外で戦争するためです。

 「防衛計画の大綱」にもとづいた「世界有事」への参加協力の方針をやめるべきです。

平和の流れを大きく

 今日のアジアは、戦争に反対し、平和を求める流れが大きくなっています。国民の生命と安全を本当に「保護する」というなら、憲法九条を厳守し、アジア諸国とともに、世界とアジアの平和の流れを大きくしていくことが重要です。


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