2005年3月17日(木)「しんぶん赤旗」

修学旅行に10万円

頼みは就学援助

お金かかる義務教育


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義務教育は無償の立場で就学援助の拡充をと話す西村さん

 「いま求められているのは、就学援助費の削減でなく、充実・増額ではないか」。十六日、衆院文部科学委員会の質問で、日本共産党の石井郁子議員は、神奈川県・大和市の西村よし子さん(43)の事例をもとに、大臣に迫りました。

 就学援助の対象は生活保護水準以下(要保護)と、それに準ずる(準要保護)家庭の児童・生徒。準要保護の基準は自治体によってさまざま。政府は、全体の九割、百十三万人の準要保護分の補助を廃止し、一般財源化しようとしています。

 五十七万円。西村さんの子ども三人が義務教育だった二年前、一年間の学校にかかった教育費です。

 小学校一年の娘に入学準備も含め十五万円余、中二の息子に部活動の遠征費十四万五千円を含めて二十二万四千円、中三の息子は修学旅行費六万三千円を含めて十九万円…。

 「上の子が高校生になって、もっとお金はかかります。でも、義務教育は無償といいながらこんなにかかるっていうことをわかってほしい」。西村さんは、ため息をつきます。

 夫婦の所得は不安定で年間三百数十万円。同市では、準要保護家庭となり、頼みの綱が就学援助です。その就学援助で出たのは、給食費や学用品、修学旅行(一部)など二十八万円分。かかった費用の半分にしかなりません。

 「二万〜三万円もする中学の制服は、小学校のころから近所の人に声をかけて、傷みの少ないお下がりを集めてすませました。中学の教師には受験情報は塾でといわれますが、塾や習い事に通わせる余裕はない」

 準備費用もあわせれば十万円近くになる修学旅行は悩みの種。「就学援助は後払いなので、サラ金で借りて払ったという人もいました」

 不況を反映して、同市の受給率は十年で三倍。在籍児童・生徒の三割にのぼっています。そうしたなか、認定は厳しくなってきているといいます。

 西村さんはいいます。「大和市では、めがね購入費も援助の対象とされるなど自治体として上乗せしています。国が公的責任をあいまいにしたり、予算枠が狭まれば、支給額が減らされかねない。義務教育は無償の立場から、制度を充実させてほしい」

 西村さんが事務局長を務める、大和生活と健康を守る会などでつくる「就学援助をすすめる会」では、毎年、四月の新学期に就学援助の申請を記入する会を開いたり、対市交渉で制度の拡充を求めてきました。

 就学援助 経済的理由によって就学困難な児童・生徒に市町村が学用品などの援助をする制度。憲法と教育基本法にかかげる義務教育無償の原則と教育の機会均等を実現するためのもので、国が二分の一を負担することになっていますが、受給者が増える一方、予算が削られ、補助率は二割に下がっています。




対象は35万人増

石井議員指摘 補助金は減額

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質問する石井郁子議員=16日、衆院文部科学委

 十六日の衆院文部科学委員会で石井郁子議員は、「三位一体改革」にもとづく「義務教育費国庫負担法等改正案」によって、就学援助費の国庫負担を削減し地方自治体に税源移譲する問題をとりあげました。

 石井氏は、要保護・準要保護の児童・生徒数は二〇〇三年度百二十五万人にのぼり、五年間で三十五万人も増加、一方で補助金額は七十六億円から七十二億円へと減っていることを紹介。そのもとで各地の自治体で就学援助の対象をせばめる動きがひろがっていることを紹介し、「地方に税源移譲すれば、このような動きを助長し支給枠を引き下げることになるのではないか」と指摘しました。

 中山成彬文部科学相は「生活困窮の家庭のお子さんに手を差し伸べることは当然で、一般財源化されても、しっかり実情を見守り、そうでなければ指導していきたい」とのべました。

 石井氏は、就学援助費の地方移譲は義務教育無償の原則と教育の機会均等を保障する国の責任放棄といわざるをえないと厳しく批判しました。


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