2005年3月7日(月)「しんぶん赤旗」

ワールドリポート

母国語で何でも相談

ドイツ 欧州移民労組

ポーランド人の 未払い賃金払わせる


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 欧州連合(EU)の拡大で、ドイツには東欧諸国から多くの労働者が流れ込んでいます。そのなかで、これら労働者の権利を守ろうと欧州移民労組が発足しました。労組は移民労働者を劣悪な労働条件で働かせる闇労働から守ったり、出身国の言葉を用いての医療援助活動に取り組んでいます。(ハンブルク=片岡正明 写真も)

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ハンブルクの建設現場でポーランド語とドイツ語の横断幕を掲げ宣伝活動をする欧州移民労組の人たち

 「ポーランド人も加盟できる労組です。リーフレットをお渡ししましたが、労働条件や賃金、健康問題など困ったことがあったら、何でも相談してください。母国語で可能です」

 欧州移民労組の活動家、リハルト・ゴーレチコさん(34)が、昼休み中のポーランド人労働者を前に言いました。

建設現場で訴え

 ハンブルクのショッピングモール建設現場。着替え用のロッカーと机があるだけの部屋で弁当を食べている労働者が耳をすませます。

 この現場で働いているのはほとんどがポーランド人です。工事の元請けはドイツのホッホティーフという大手建設会社ですが、下請けはウェストブンドというポーランドの会社。ポーランド人がポーランドの建設会社に雇われ、ドイツで働いているのです。

 ゴーレチコさんの呼びかけや配るリーフレットもポーランド語でした。

 「今日、はじめて労組のことを聞いた。興味があるから考えてみる」と話す労働者もいます。

 ゴーレチコさんはいいます。

 「昼休みは情報提供の場です。建設現場では監督もおり、労働者とはなかなか話になりません。しかしリーフレットを配って数日すると相談の電話がかかってきます。また仕事が終わって合宿所でビールを飲み交わすと本音も聞けます」

 この日は雪の中、欧州移民労組の四人の活動家がハンブルクの九つの建設現場を回りました。

20数万人が働く

 欧州移民労組は、ドイツで働く東欧諸国の労働者を援助するため二〇〇四年九月、ドイツ建設・林業・農業・環境産業労組(IGBAU)の協力で結成されました。

 背景には、移民労働者の増加があります。東欧から西欧に流れ込んでいる移民労働者は五百万人から六百万人といわれますが、ドイツでは公式に登録されているだけで二十数万人が働いています。うち建設業で働くのは約六万人です。

 移民労働者の中には企業にだまされて労働許可をとらない、いわゆる闇労働のもと悪条件で働く人も多くいます。また、外国の下請け会社のなかには、ドイツの労働法を守らない企業があって、ドイツ人労働者の労働条件や賃金を下げる大きな要因ともなっています。 例えば、ドイツでは建設労働者の時給の最低賃金は十二・五ユーロ(約千七百二十五円=旧西独地域、旧東独地域は十・五ユーロ)ですが、ポーランドの会社は時給五ユーロ、ルーマニアの会社は三ユーロしか払わないところがあります。欧州移民労組は、闇労働については会社に正規に労働ビザをとらせるよう、また最低賃金を守るよう交渉をしています。

 欧州移民労組のマチアス・キルヒナー書記長は語ります。

 「賃金未払いのままの偽装倒産や、わけのわからない書類に署名させられて長時間労働を強いられたりする労働者が多くいます。ほとんどの外国人労働者は、ドイツでの最低賃金のことを知りません。また、病気になったときには労働者の母国語を理解する医者を探す必要があります。これまでは、労働者が信頼できる組織がありませんでした。私たちは、外国語を話すスタッフをそろえて労組結成に踏み切ったのです」

各国労組と連携

 現在、労組スタッフはドイツ語のほか、英語、ポーランド語、ハンガリー語をカバーできます。組合員は約五百人でポーランド人がほとんど、ハンガリー人もいます。

 「ミュンヘンでは、賃金未払いのまま、パンをかじって三カ月半食いつないでいたポーランド人労働者に対し賃金を支払わせた」などの成果もあがっています。

 キルヒナー書記長は「次のステップはルーマニア人労働者の組織です。またドイツの国境を越えて組織を広げたいと計画し、スイス、オランダ、オーストリア、スカンディナビア諸国の労組とも連携をとり始めています」と言います。

 最近、労組に加入したチェフツ・マーシェツさん(45)は「ドイツのハーゲンで一時間五ユーロで働かされていました。いま労組の援助を得て、ドイツで決まっている最低賃金との差額を会社に支払わせるため労働裁判所でたたかっています」と語りました。


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