2005年3月6日(日)「しんぶん赤旗」

解放記者銃撃

撤退世論高まる

イタリア政府は困惑


 【ベネチア=浅田信幸】イラクの武装勢力に拉致された女性記者ズグレナさんの解放と、その直後の米軍による発砲での救出にあたった情報機関員の死亡―喜びが一瞬にして暗転する劇的な事態の進行に、イタリア政府は困惑を隠せないでいます。

 ベルルスコーニ首相は四日、米国に対し「説明」と公式の「謝罪」を求める意向を明らかにするとともに、「誰かが責任をとるべきだ」と米軍関係者の処罰を求めました。一方、フィーニ外相はコリエレ・デラ・セラ紙のインタビューに答えて、事件を「運命のぞっとするいたずら」と述べるとともに、米国と米軍に対する「評価は変わらない」との姿勢を明らかにしました。

 政府内部には、反米感情が広がることを懸念し、イラク問題での政府の方針を変えないために躍起となっている事情がうかがえます。五日付各紙は一面トップで「ズグレナ解放、米軍発砲、解放者を殺害」(マニフェスト)「ズグレナ負傷、情報機関員殺害。イタリア、米国に抗議」(コリエレ・デラ・セラ)、「解放後の悲劇、米兵発砲」(ウニタ)など、拉致された記者の解放と米軍発砲・殺害事件を並べて大きく報じています。

 もともとイラク戦争と伊軍派遣に批判的な世論が、今回の事件でさらに燃え上がるのは確実です。五日付コリエレ・デラ・セラ紙は「政府に対する軍撤退を求める圧力は強まらざるをえない」と指摘しました。

 一月末に実施されたイラク暫定国民議会選挙を「イラク情勢の転換点」と評価した中道左派勢力の間にも疑問の声が広がる気配があります。野党第一勢力の左翼民主党ファシノ書記長は「一人の命を救う困難な作戦に取り組んだ人物が、市民の命を守るためにイラクにいると主張している人々に殺されるのは信じがたい」との談話を発表しました。

 またベネチアで党大会を開催中の共産主義再建党のリベラチオーネ紙五日付は、第一面から大会関係の報道を外し、女性記者解放と情報機関員殺害を報道。同じく一面の主張で「イラクからの撤退」を呼びかけました。


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