2011年10月25日(火)「しんぶん赤旗」

主張

次期戦闘機の選定

歯止めなき軍拡競争をやめよ


 退役が進む航空自衛隊のF4戦闘機の後継機となる次期戦闘機選びが最終段階に入っています。

 米国を中心に9カ国が共同開発中のF35、米軍が使用中のFA18、欧州4カ国が開発したユーロファイターの3機種から選ぶもので、年内に決定される予定です。最終的に約40機購入する計画で、2012年度予算の概算要求に4機分551億円が計上されています。予算総額は莫大(ばくだい)で、国民生活予算を圧迫するのは必至です。世界有数の機能をもつ戦闘機の導入は近隣諸国との軍事的緊張を強めることにもなりかねません。

「憲法に触れる」能力

 機種の決定はこれからですが、F35戦闘機が候補としてとくに有力視されています。レーダーにとらえられにくいステルス性を備えた「交戦能力」の高い第5世代の戦闘機です。航続距離は長く戦闘行動半径も格段に広いうえに爆撃能力までもっています。

 もともと航続距離が長く爆撃能力をもつ戦闘機の導入は「憲法に触れる」というのが従来の政府見解でした。1967年3月の国会論議で当時の、増田甲子七(かねしち)防衛庁長官は「憲法に触れる」と言明、72年には増原恵吉防衛庁長官も「憲法による攻撃力は持たないという意味で…爆撃装置をつけない」とのべました。F4戦闘機の導入時に国会で大きな問題となり、政府が爆撃装置をはずした経緯もあります。航続距離が長く爆撃能力まで持つ戦闘機をもてば海外に出て他国を侵攻する能力をもつとみられることを懸念したからです。

 防衛省がしぼりこんだ、F35を含む3機種はすべて、航続距離が長く爆撃能力も高いものです。どれを選んでも「憲法に触れる」とした政府見解に違反するのは明らかです。

 防衛省は「周辺国が第5世代戦闘機を開発している」ということを次期戦闘機保有の口実にしています。「中国脅威」論などをあおりながら軍拡を進める魂胆です。政府が自衛隊をどこにでも迅速に出動させる「動的防衛力」構想を具体化しているなかで、過去のアジア侵略を心から反省していない日本が世界有数の戦闘機を保有すれば、アジア諸国の警戒心を強めさせることになります。軍拡が軍拡を呼び込むという悪循環にもつながります。アジア地域の平和と真の平和・友好関係にひびをいれるような軍拡政策を政府は根本から改めるべきです。

憲法生かす外交力でこそ

 防衛省がF35の導入を最有力視するのは、野田政権のアメリカ直結の「使い走り」内閣ぶりを示す点でも見過ごせません。アメリカはF35開発への日本参加を拒否してきた方針を変え、主要部品やエンジンの組み立てなどを日本に認めるといいだしています。共同開発への参加を認める代わりに日本にF35を大量に買わせる狙いがあるのは明白です。

 だいたい、財政がたいへんな状況にあり、東日本大震災復興を最優先にしなければならないときに、巨額の予算で、憲法上も問題がある最新鋭の戦闘機を買うこと自体許されることではありません。

 いま求められるのは、足の長い爆撃能力も高い戦闘機を導入して軍事力には軍事力でという「軍事対抗主義」を強めるのではなく、憲法を生かした外交力です。平和的役割に徹することこそ重要です。





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