2011年9月27日(火)「しんぶん赤旗」

小沢元3秘書に有罪

水谷「裏献金」受領を認定

陸山会事件


 民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、虚偽記載罪に問われた衆院議員石川知裕被告(38)ら元秘書3人に東京地裁(登石郁朗裁判長)は26日、有罪判決を言い渡しました。判決は、史上最高の立件額となった約21億7000万円の虚偽記載をすべて認定、「規正法の趣旨にもとる、悪質な犯行」と断じました。


東京地裁判決

 判決は、中堅ゼネコン「水谷建設」からの1億円の裏献金の授受を認め、この隠蔽が土地購入資金をめぐる虚偽記載の動機になったと認定しました。西松建設の違法献金では、元公設第1秘書大久保隆規被告(50)が東北地方の談合の本命業者を決める「天の声」を出していたことも指摘、公共事業を食いものにしてきた小沢氏の政治責任が厳しく問われることになりました。

 言い渡された量刑は、石川被告に禁錮2年、執行猶予3年(求刑禁錮2年)、大久保被告に禁錮3年、執行猶予5年(同禁錮3年6月)、元私設秘書池田光智被告(34)に禁錮1年、執行猶予3年(同禁錮1年)。

 土地取引をめぐる事件で、裁判長は、小沢氏から借り入れた土地購入代金の4億円を、石川被告が複数の口座に分散入金し、その後集約して組んだ定期預金を担保に銀行から融資を受けたことを「隠蔽工作」と指摘。「4億円を隠すため、故意に虚偽記載したのは明らかだ」としました。

 水谷建設からの裏献金については「石川被告と大久保被告に都内のホテルでそれぞれ5000万円ずつ渡した」とした同社元社長の証言は信用できると判断。虚偽記載の動機について、「4億円の原資を追及・詮索され、水谷建設からの資金や、小沢事務所が長年にわたって企業との癒着の下に資金集めを行っていた実態が明るみに出ることを避けようとした」としました。

 「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に公明、公正に行われるようにする」という政治資金規正法の趣旨を踏みにじり、「意図的に数多くの虚偽記入」などを行ったことについて、「政治活動や政治資金の流れに対する国民の不信感を増大させた。まったく反省の姿勢を示していない」と厳しく批判しました。

 公判で地裁は、検察側が請求した供述調書の大半を「威圧的な取り調べや利益誘導があった」として不採用としましたが、判決は、大久保被告が土地の選定や売買契約に深く関与したという状況証拠から起訴内容の一部を除いて、共謀を認めました。

解説

三転四転の購入原資

癒着断罪 小沢氏に責任

 小沢一郎民主党元代表の秘書だった被告全員に有罪判決が言い渡されたことで、小沢氏の責任はいっそう免れないものとなりました。

 判決は、虚偽記載の動機が水谷建設からの裏金1億円を隠すことにあったと指摘。「公共工事を巡る小沢事務所と企業との癒着を背景とするもの」だと断罪しています。

 陸山会事件で虚偽記載として判決で認定された額は21億7000万円。西松建設違法献金事件でも本紙の調べで1億2900万円が小沢氏側に流れています。

 「少し大きな金のことは、先生に報告するのが当然のこと」(元側近)と、元秘書らにとって絶対的存在である小沢氏。その資金集めの手法そのものに問題ありとされたわけですから、小沢氏自身の政治的責任が問われるのは当然のことです。

 小沢氏は、自民党中枢にいた当時からゼネコン裏献金問題など、常に「政治とカネ」の疑惑が指摘されてきました。それを「不当な国策捜査」などと欺瞞(ぎまん)的な言動で問題点をすり替え、自らの疑惑について明確な説明を避けるのが、得意の政治手法です。陸山会事件でも土地購入の原資についての説明を「政治資金」「親の遺産」「知人から預かった金」などと、三転四転させてきました。

 しかし、それが国民の常識とかけ離れていることは、マスコミの世論調査のたびに「小沢氏の説明に納得できない」という声が圧倒的なことにも示されています。今回の元秘書への有罪判決が、こうした批判をいっそう強めることは間違いありません。

 判決は、10月6日から始まる強制起訴された小沢氏本人の公判にも大きな影響を与えます。その結果のいかんにかかわらず、小沢氏と民主党は国民にたいして納得のいく説明をすることが避けられない状況です。(森近茂樹)


 陸山会をめぐる事件 東京地検特捜部は2009年、小沢一郎民主党元代表の資金管理団体「陸山会」などが、西松建設から受けた企業献金を、同社のダミー政治団体からの寄付と偽って収支報告書に記載したとして、大久保隆規元公設第1秘書らを逮捕、起訴しました。10年には、陸山会が入手した土地の購入費を同報告書に記載しなかったなどとして、石川知裕衆院議員ら3人を逮捕、起訴し、小沢元代表は嫌疑不十分で不起訴としました。

 土地購入事件を告発した市民団体の申し立てを受けた検察審査会は、小沢元代表を起訴すべきだとする「起訴相当」を議決。特捜部による再度の不起訴処分を受けた再審査で、2回目の議決(起訴議決)をしました。議決を受け、検察官役の指定弁護士は今年1月、小沢元代表を強制的に起訴しました。





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