2011年9月19日(月)「しんぶん赤旗」

主張

「敬老の日」

高齢者を災害から守るために


 高齢者を敬い、長寿を祝う「敬老の日」です。近年日曜日と連休になった半面、各地の行事は分散化していますが、あらためて高齢者に感謝し、高齢者の置かれた状況を見直す日にしたいものです。

 とりわけ今年は東日本大震災や台風被害などで多くの高齢者が犠牲になりました。高齢者を災害からどう守るかが、切実な問題になっています。

多くの高齢者が被災

 亡くなった人と行方不明者が2万人にのぼる東日本大震災でも、紀伊半島を中心とした台風12号による豪雨被害でも、高齢者の被害が目立っています。もともと高齢者の比率が高いことに加え、強い地震や津波、予想を超える豪雨などで、避難が間に合わず、尊い命を失った方も少なくありません。

 災害に際し、まず問題になるのは避難や救援の態勢です。体力が衰え、不自由さも抱えた高齢者が短い時間で避難するのは容易ではありません。高齢者の比率が高い地域では、高齢者が高齢者を支えて避難することにもなります。地域や行政が日ごろから高齢者の連絡網などを整え、態勢を準備する必要があります。

 近年の高齢者施設の火災などでは近所の協力が得られるよう日ごろからの地域との付き合いが課題になりましたが、大規模な災害ではそれも不可能です。規模の大きい施設では多くの高齢者をどこへどう避難してもらうのかが大問題です。高齢者の尊厳を損なわず速やかに避難させられるよう、日ごろの準備や訓練が重要です。

 避難したあとの、医療や介護の確保も大きな課題です。東日本大震災では高齢者を介護できる福祉避難所が設けられましたが、まだまだ不足しています。高齢者は生活環境や習慣が変化するだけでも症状が悪化します。被災直後の態勢とともに、本格化する復興の中でも高齢者の介護や医療の態勢を急いで整える必要があります。

 すでに大震災の被災地では、症状が悪化し、介護認定を申し込むケースが増えているといわれます。高齢者の立場にたって、公的な介護施設や病院など、手厚い態勢を急いでつくるべきです。多くの場合介護や医療の従事者自身が被災者です。自治体や民間の努力任せにせず、国の支援が決定的です。

 被災地が直面している問題は、高齢化にともないこれから全国が直面することになる問題でもあります。政府は高齢者の災害対策に力を入れて取り組むべきです。防災対策の総点検とともに、災害に強い町づくりをめざし、高齢者が避難しやすい道路や公共施設のバリアフリー化を進めること、高齢者を「ひとりぼっち」にしない地域社会をつくっていくことなどがとりわけ重要です。

冷たい政治転換を

 ことし70歳を迎えるのはアジア・太平洋戦争が始まった年に生まれた人たちです。80歳を迎えるのは「満州事変」の年に生まれた人たちです。戦前・戦後のご苦労に思いをはせるとともに、そうした人たちが安心した老後を送れるよう対策をつくすのは国と社会の重大な責任です。

 お年寄りを差別する「後期高齢者医療制度」廃止の公約は投げ捨て、年金制度や医療保険を改悪し、消費税増税を押し付けるなど、高齢者に冷たい政治は、根本から変えさせる必要があります。





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