2011年9月8日(木)「しんぶん赤旗」

東電 黒塗り手順書

原発事故発生時の運転操作

過酷事故への対応は未提出


写真

(写真)7日に明らかになった、東京電力が作成した福島第1原発事故発生時の運転操作手順書の内容の一部

 東京電力が作成した福島第1原発事故発生時の運転操作手順書の内容の一部が7日、明らかになりました。2日に開かれた衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会の理事会に、経済産業省原子力安全・保安院が提出したもので、同委員会の川内博史委員長(民主党)が公表しました。会見には日本共産党の吉井英勝衆院議員が同席しました。手順書はほとんどの部分が黒塗りされています。

 手順書には、原子炉を緊急停止した後の圧力調整や格納容器の冷却、原子炉の冷却装置の使用などについて、当直長や運転員の操作内容が書かれています。

 「原子炉圧力調整」の項目では、当直長が「SRV(逃がし安全弁)による原子炉圧力制御指示」を行い、操作員が「原子炉圧力上昇時は、SRVを順次『手動開』又は非常用復水器使用により、原子炉圧力『■MPa(メガパスカル)』〜『■MPa』に維持実施、報告」するなどとあります。(■は黒塗り部分)

 提出された手順書は津波後の過酷事故への対応を含んでいなかったため、理事会は過酷事故発生時の手順書を改めて7日に提出するよう求めていましたが、東電は知的財産が含まれることや核物質防護を口実にして提出を拒んでいます。理事会は改めて提出を求め、12日に同委員会を開催する方向で調整が進んでいます。

 吉井氏は「東電は加害者としての責任をどう考えているのか。東電に知的財産を理由に非公開を求める資格はない。全交流電源喪失での過酷事故を想定した手順書が本当にあるのかも疑わしい事態だ」と話しています。


解説

全容解明へ 検証必要

 事故時における運転操作手順書は、事故原因を解明するうえで不可欠なものです。

 今回、福島第1原発は地震・津波によって電源が失われ、原子炉の冷却が不能になりました。原子炉への注水やベント操作(原子炉格納容器の圧力を下げるためにガスを逃がす操作)など、対応の遅れが事故の拡大につながったという見方があります。電源喪失時の操作が手順書で想定されていたのか、実際の対応はどうだったのかなど検証が必要です。

 東京電力が、過酷事故発生時の手順書の国会提出を拒んでいることは、言語道断です。

 政府や電力会社はこれまで、過酷事故は「わが国では起こりえない」などとして対策を怠ってきました。

 過酷事故(シビアアクシデント)は、原子炉の暴走や冷却材喪失などによって炉心の核燃料が損傷するような重大事故です。過酷事故に至った場合の「アクシデントマネジメント」については、1992年に指針が策定されて以来見直されず、電力会社の自主的取り組みとされて法規制の対象としてきませんでした。そのため、経済産業省原子力安全・保安院は、電力各社の過酷事故時の運転操作の内容を把握していないと説明しています。

 しかし、事故の重大性を考えるなら、手順書は、一企業の社内文書として公開を拒むことは許されません。全容を国民の前に明らかにし、今後の教訓としなければなりません。(中村秀生)





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