2011年9月4日(日)「しんぶん赤旗」

主張

「ミスター増税」

ますます広がる国民との矛盾


 「ミスター増税」と呼ばれる野田佳彦首相が率いる新内閣が発足しました。

 首相は前内閣の財務相として、社会保障と税の「一体改革」の名による消費税の10%への増税や「復興増税」の路線を推進してきました。2日の記者会見でも「復興増税」の議論を急ぎ、消費税増税法案を来年3月までに提出する方針を改めて表明しています。

かつてない大増税

 首相は「決して財政原理主義者ではない」と弁解しました。しかしそれは、増税は断固推進するけれども増税の時期については「経済情勢をよく勘案する」ということを言っているにすぎません。

 “増税を実施するのは景気が良くなってから”。自民党政権も1990年代、消費税を5%に引き上げる方針を決めたときから同じことを言ってきました。暮らしを壊す負担増への国民の批判の矛先を鈍らせようという狙いです。現実には97年に消費税を増税した途端、上向いていた景気が急降下し、長期不況に陥ってしまいました。当時の自民党首相(故・橋本龍太郎氏)が、のちに「国民に深くおわびしたい」と失政への反省を込めて謝罪した通りです。

 野田首相は「復興増税」も「一体改革」の消費税増税も実施の時期は「経済状況が好転」してからと言っています。政府が「経済状況が好転」したと判断したそのときから、東日本大震災の被災者を含めて国民は大増税に見舞われるということです。

 97年当時と比べても国民の所得は大幅に減少しています。被災者の生活再建は遅々として進んでいません。かつてない大増税は復興の営みも、暮らしと経済も奈落の底にたたき落とし、結果として税収も増えずに財政をも悪化させる悪夢がよみがえる―。こういう政治を大失政と呼ばずして何と呼べばいいのでしょうか。

 野田首相が組閣前の1日に財界を表敬訪問し、自民、公明両党と党首会談をしたことは「ミスター増税」の姿を象徴しています。

 そのとき首相は経団連の米倉弘昌会長に、経済・財政政策を統括する新たな会議への参加を依頼し、米倉氏は全面協力を約束しました。小泉「構造改革」を推進した経済財政諮問会議のような機関を設け、再び財界トップを司令塔に迎える意向です。消費税増税と法人税減税、原発依存の継続、環太平洋連携協定(TPP)への参加を求める財界と政策面でも直結する動きです。

 自公との党首会談では、今後の税制改定についても民自公の3党で協議機関を設置して推進すると確認しました。民自公の翼賛体制で財界が求める悪政を一気に進めようという危険な道です。

たたかいを大きく

 自民党の谷垣禎一総裁は6月の党首討論で、重大な行動に出る例えである「ルビコン川を渡れ」という表現を使って、民主党に消費税増税の決断を求めました。「ルビコンを渡ったら一緒に議論しよう」と。野田体制は消費税増税だけでなく、財界直結という点でも自民党政治と一体化する「ルビコン」を渡りました。

 この道は国民との矛盾をいっそう広げざるを得ません。暮らし最優先の経済・財政への転換を求めて、民自公の翼賛体制を包囲するたたかいを大きく広げていこうではありませんか。





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