2011年8月29日(月)「しんぶん赤旗」

リビア軍事介入

NATOに批判

「安保理決議を逸脱」と指摘も


 リビアの強権的なカダフィ体制が事実上、42年の幕を閉じました。英仏が主導し米国が支えた北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入は、リビア国民自身の手による政治変革の事業の正当性を損なうだけでなく、混乱をもたらす危険があります。(ロンドン=小玉純一)


 「われわれの革命ではないが、われわれが果たした役割に誇りをもてる」。キャメロン英首相は反カダフィ派が首都トリポリを事実上制圧した22日、英空軍をたたえました。

 英軍は約900のカダフィ軍の関係施設を破壊したと報告しています。英国は3月から特殊部隊もリビア領内に派遣。反カダフィ派にNATO軍との連絡用装備を提供したとも報じられています。フランスもロケット砲や自動小銃などの武器を反カダフィ勢力側に供与していたことが明らかになっています。

 NATOの発表によれば、作戦は3月末以来、2万回以上の出撃と8000回近い爆撃を数えました。外国軍の介入なしに、政権を打倒したチュニジアやエジプトと異なる点です。

 NATOのリビア空爆は、英仏主導で採択された国連安保理決議1973(3月)を受けたものでした。同決議は、リビアの人々の人命保護のため「あらゆる措置」を容認。NATOに空爆の口実を与えるものでした。英仏は空爆当初からカダフィ氏退陣を公然と要求し、政権打倒をめざす性格を帯びました。

 中国やロシア、ブラジルなどは「無差別攻撃」であり、人命保護のためという「安保理決議の枠を超えている」と批判してきました。国際社会は、政権が強権であることを理由に、外国が軍事力をもって打倒することまで容認していません。

 欧米の主要国は最近までカダフィ政権と関係強化を進めてきました。2年前のG8首脳会議はカダフィ氏を招待しています。

 しかし欧米は態度変更に追い込まれました。リビアの隣国チュニジアやエジプトでの強権体制打破の高揚に鼓舞されたリビアでのたたかいも盛り上がりを見せ、反政府勢力の弾圧を宣言したカダフィ政権を欧米は見捨てました。

 国内では、カダフィ支持派による抵抗や、反カダフィ諸勢力の内紛も懸念されています。新政権への移行の過程や移行後の治安が安定しなければ、NATOの治安支援部隊の派遣が持ち上がる可能性もあります。

 NATOは、米軍が空爆でタリバン政権を打倒した後のアフガニスタンに治安支援のためだとして駐留しましたが、反発を招き事態は泥沼化。いまや撤退に追い込まれつつあります。政権を打倒できても国づくりがいかに困難かはイラクやアフガンの事態が示しています。





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