2011年8月22日(月)「しんぶん赤旗」

主張

「秘密保全」法制

知る権利侵害する企てやめよ


 政府の「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」(座長・縣公一郎早稲田大教授)がこのほど、「秘密保全」の法制化を求める報告書を枝野幸男官房長官に提出しました。国民の知る権利を侵害する重大な提言です。

 報告書は「秘密保全」の対象を「国の安全」=軍事分野だけでなく、「外交」や「公共の安全及び秩序の維持」といった分野にまで広げ、罰則も懲役5年や懲役10年とする重罰主義をむきだしにしています。自民党政権が何度も成立をめざした「国家機密法」を先取りするもので、民主党政権の危険性があらわになっています。

何でもかんでも秘密

 報告書は、昨年尖閣諸島沖でおきた中国漁船衝突事件の映像が海上保安庁から流出したことを受けて「秘密保全」の法制化が必要だとする仙谷由人官房長官(当時)の求めに応じたものです。映像を流出させた元海上保安官は起訴猶予となりました。にもかかわらず政府が「有識者会議」の作業を続けさせたのは、映像流出問題が単なる口実にすぎなかったことを示しています。

 政府が「秘密保全」の法制化をめざすのは、日米両政府が2007年に結んだ「秘密軍事情報保護協定」(GSOMIA)を根拠にしたアメリカの要求が背景です。日米軍事一体化を強化・拡大するうえで日本に共有させている米軍の軍事情報を法律で保全させるためです。アメリカの要求に応えることで民主党政権の基盤を強める思惑も否定できません。

 防衛省だけでも法令で10万9千件(07年12月現在)の秘密が保全されています。国会でさえその全容を知ることはできません。重大なのは、軍事分野だけでなく、「外交」や「公共の安全及び秩序の維持」に関するものまで「秘密保全」法制の対象にしようとしていることです。外務省も「相手があるから」といって多くを秘密扱いにしています。警察も同じです。

 こうした行政措置による秘密も含めて罰則をつけて保全するのが「秘密保全」法制です。何でもかんでも秘密にし、「秘密保全」法制で国民が政治の内容を知ることのできない状況にするのは、憲法が保障する国民の知る権利の侵害そのものであり、許されません。

 報告書が秘密流出防止の「抑止力」は「法定刑を相当程度重いものとする」とのべているのも大問題です。日米相互防衛援助協定による秘密保護法は懲役10年が上限ですが、これを他の分野にも広げるというのです。国家公務員法の懲役「1年」では「抑止力も十分ではない」といっているのはそのためです。行政機関のもとで秘密情報にかかわる民間企業などの職員も重罰の対象になります。

戦前の誤りくりかえすな

 報告書は報道機関の取材について、「不当に制限するものではない」といいつつ、「刑罰法令に触れる」取材は処罰対象とのべています。政府が勝手に広い範囲で秘密対象を増やし、それを取材すれば、やり方次第で処罰するというのは取材の自由の侵害にあたります。

 戦前、政府・軍部が「軍機保護法」などでメディアや国民の目をふさいだことが侵略戦争につながりました。この戦前の誤りをくりかえさせないためにも、「秘密保全」法制の危険な企てを許さない声を大きくすることが重要です。





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