2011年8月21日(日)「しんぶん赤旗」

主張

国民生活センター

消費者目線で「一元化」見直せ


 東日本大震災の被災地では、「屋根修理で高額請求」「義援金目当ての投資話」など、新たな消費者被害が広がっています。世に悪徳商法の種は尽きません。

 各地の消費者センターなどに寄せられる消費者被害の相談は毎年100万件程度にのぼり、新手の巧妙な詐欺、深刻な製品事故も続いています。これへの対策を全国的ネットワークで進めてきた国民生活センターを消費者庁に統合・一元化する動きがあります。消費者行政の強化どころか後退を招き、「消費者の利益を大きく損なう」と批判の声があがっています。

消費者庁の「暴走」

 「業界寄りで消費者目線を欠く」といわれてきた日本の行政は、2009年9月の消費者庁、消費者委員会発足で大きく変わると期待されました。初めて消費者問題を専門に扱う国の機関が誕生し、消費者行政の“司令塔”としての消費者庁、全省庁を“監督”する消費者委員会、消費者への情報提供や相談助言活動など機動的に動く国民生活センターの機能が強化され、消費者の権利が守られる社会への機運が高まるはずでした。

 それから2年。民主党政権は「事業仕分け」にもとづく昨年12月の閣議決定で、「効率化」のために国民生活センターの「廃止を含めた見直し」を決め、消費者庁と統合・一元化しようとしています。

 「効率化」といいますが、消費者庁と国民生活センターは果たすべき役割や機能が違います。

 消費者被害への対応で、消費者庁はその業者を処分する強い権限を持つだけに厳密な法解釈で慎重な姿勢をとるのにたいし、国民生活センターは消費者の側に立ち、法を柔軟に解釈して解決の道を示し、被害拡大を防ぐために迅速に注意喚起をします。消費者庁への一元化は、国民生活センターの消費者の立場からの柔軟性や迅速性の機能を損ない、消費者被害が拡大することが心配されています。

 これは杞憂(きゆう)ではありません。電子たばこ、加圧スパッツなどの案件で、国民生活センターが国民からの相談にもとづき早期に注意喚起しようとしたのに対し、消費者庁がそれにストップをかける方向で圧力をかけたことが、消費者委員会で問題化しています。

 一元化には、消費者委員会が「慎重に検討を深める必要がある」と意見をあげているのに、消費者庁は手続きを強引にすすめようとしています。全国の13の消費者団体は連名で「消費者庁の『暴走』に強く抗議します」という声明を出しました。それでも細野豪志消費者担当大臣は、「8月の末という区切りで判断したい」と無責任な答弁をしています。

白紙から議論尽くせ

 日本共産党は、消費者行政の抜本的拡充のため、消費者庁や消費者委員会の体制・人選を適切なものにし、国民生活センターの人員、予算も増額するよう求めてきました。一元化方針に対しては、大門実紀史参院議員が国会で、「白紙で一からじっくりみんなで考えるべきだ」と要求しています。

 消費者の利益を第一にし、消費者の納得と理解を得てこそ、日本にまともな消費者行政を根付かせるという大きな仕事は成功します。消費者庁への“一元化ありき”ですすめたこれまでのやり方を改め、じっくりと腰をすえた議論を尽くす努力をすべきです。





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