2011年7月21日(木)「しんぶん赤旗」

汚染水処理なお不透明

福島原発の工程表見直し


 東電福島第1原発事故収束に向けた十九日発表の工程表の見直しでは、本格的な汚染水処理施設の検討や、遮蔽壁(しゃへいへき)設置の着手などが盛り込まれる一方、これまであった、原子炉格納容器漏えい箇所の密閉はなくなりました。また、使用済み燃料の取り出しの時期なども示されました。(図)

 政府・東電は、汚染水を処理して原子炉を冷却する「循環注水冷却」が始まったことなどをあげて、「ステップ1」を達成したとしています。しかし、本格的な汚染水処理施設設置を打ち出したのは、現在の循環注水冷却が予定通りの機能を発揮していないからです。

 工程表のステップ2で掲げる「冷温停止状態」を実現するには、原子炉に水を入れ続ける必要があります。しかし、1〜3号機の原子炉は圧力容器も格納容器も穴が開いていて、水を入れれば入れるほど大量の放射性物質を含んだ水が原子炉建屋やタービン建屋の地下にたまっていきます。6月には汚染水の量が十数万トンに達し、原子炉建屋やタービン建屋の地下からあふれ出す寸前まで行きました。

 政府と東電が、汚染水処理の“切り札”として打ち出したのが「循環注水冷却」でした。しかし、当初からトラブルが相次ぎ、そのたびに運転をストップ。いまだに運用方法が決まらないまま運転を続けています。

 さらに、毎時50トンを見込んでいた処理能力も同37トンしかないことが判明。この1週間の処理量は予定の半分程度です。このため、東電は原子炉への注水量をできるだけ少なくしていますが、タービン建屋から汚染水を移送している施設の水位は東電が満杯の目安としている高さ付近まで上昇しています。

 汚染水処理の過程で、1立方センチ当たり1億ベクレルという高濃度の放射性物質を含む汚泥が今年12月までに約2000立方メートル発生するとみられていますが、どのように扱っていくかは未定です。

 汚染水処理は待ったなしで、しかも確実に遂行する必要がある課題です。現行の施設で万全の運用を期すと同時に、各号機ごとに汚染水の処理をするなど、現実にあった新たな方式での施設設置が求められます。(間宮利夫)

図




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