2011年7月18日(月)「しんぶん赤旗」
放射能汚染 なんで外で遊べないの
「子育ての安心」父母ら切実 福島市渡利地域
東京電力福島第1原発から約60キロメートルの福島市の渡利(わたり)地域では、毎時3マイクロシーベルトを超える比較的高い放射線量が観測されています。子どもを持つ父母らは不安な日々を送りながらも、「安心して住み、子育てできるよう、安全な地域を取り戻したい」と努力しています。(細川豊史)
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福島市は、5月下旬に渡利小学校の表土を除去し、校庭中心部の放射線量は毎時0・15マイクロシーベルトに下がりました。しかし、学校の外では6月下旬に3・83マイクロシーベルトを観測。子どもたちは家庭や学校で外遊びができない状態です。小学校低学年の男の子は「ゲームしかしてない!」といいます。
「今までのように外で遊ばせてあげたい」「私たちは避難しなくていいのか不安。みんなイライラしています」
渡利に住む子育て中の女性3人は15日夜、子どもたちを連れて日本共産党の宮本しづえ福島県議予定候補(党県副委員長)に相談しました。
中学3年の娘を持つAさん(37)は「情報が入らず、みんな不安。地域の汚染状況や除染の計画を説明してほしいと市役所支所にいいました」と訴えました。
市に要請へ
宮本さんは「大事なのは、早く表土除去して安全な地域にすることよね。全住民対象の説明会を開くように市に申し入れましょう」と提案。3人と19日に市役所へ要請することになりました。
日本共産党市議団(斎藤ともおき団長・4人)も市や県に、校庭の表土を削るよう要請を行ってきました。
同小に1年生の男の子を通わせている女性(26)=会社員=は「市の対応は遅いと思います。一刻も早く街を除染してほしい。原発は事故が起きたら大変なことになるのだから、原発なしでやっていくべきだと思います」と話します。
「市の取り組みの一つひとつは大切ですが、子どもたちを守る全体的な方針が見えないから親は不安になるのでは」と指摘するのは、同小PTAの佐藤秀樹副会長(44)です。
父母からは表土除去後も不安の声が絶えません。PTAは、父母の不安や要望を聞くアンケートを実施します。
避難に迷う
同小近くの学童保育「きりん教室」は、放課後、会話も聞き取れないほどのにぎやかさでした。子どもたちは外遊びができず、人形づくりやお絵かきなどをしていました。
指導員(56)は「子どもたちは放射能の話は知っていますが、外で遊んじゃだめというと『何で?』と聞くんです。外に出たいんですよね」と話します。
そこへ、小学生の男の子を預けている30代の女性会社員が、「他県の両親が『子どもをこちらに避難させなさい』というので、悩んでいます」と相談にきました。避難を選べば2人の子どもだけ他県へ移るか、自分も移り、夫は福島に残ることになります。
指導員は語ります。
「私たちはここで生活したい、ここを安心できる場所に戻したいと思っています。そこにエネルギーを注いで、学校、父母、子ども、地域が力を合わせて頑張りたい」
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