2011年7月1日(金)「しんぶん赤旗」

「共通番号制」導入へ

政府・与党 15年運用開始目指す


 政府・与党社会保障改革検討本部(本部長・菅直人首相)は30日、国民一人ひとりに新たな個人番号を付けて、税金の徴収や社会保障分野で利用する「共通番号制度」の導入に向け、「社会保障・税番号大綱」を決定しました。今年秋以降に関連法案を国会に提出、2014年6月には個人に番号を振り、15年1月以降の運用開始を目指すとしています。

 国民に個人番号をつけるほか、法人にも「法人番号」を付けます。現在は、年金手帳や健康保険証など分野ごとの番号が使われています。それを共通番号によって名寄せし、それぞれの情報を管理する機関の間で突き合わせて活用できるようにするものです。

 当面、年金、医療、介護、生活保護、労働保険、税務の6分野で活用。将来的により幅広い分野での利用を目指すとしています。

 現在の住民基本台帳カードを改良して、健康保険証や年金手帳などの機能を果たすカードをつくり、個人番号を記憶させ国民に交付します。

 共通番号導入で「所得把握の精度を向上」「きめ細やかな社会保障給付」が可能になるとしたほか、「災害時における活用」を新たに盛り込みました。

 一方で、(1)個人情報の国家の一元管理(2)情報漏えい、集積した個人情報による特定個人の選別・差別(3)「なりすまし」など、不正利用による財産的被害―の懸念を指摘。個人情報保護の措置として、(1)目的外利用などに罰則を課す(2)首相の下に第三者機関を設置し行政や医療機関を監督する(3)医療分野の病歴などの個人情報保護のための特別法をつくる―などとしています。

 新たなシステム開発には多大な費用がかかりますが、明らかにしていません。


国民的議論ないまま

社会保障の削減狙う

 30日に決定された税と社会保障の共通番号大綱は、共通番号制の導入を「社会保障をよりきめ細やかに、的確に行う」「国民の利便性が向上し国民の権利がより確実に守られるように」するためだと強調。“国民のため”といわんばかりです。

 しかし、個人情報を行政などが集積し、民間も含めて活用する共通番号制には、さまざまな懸念が指摘されています。

 「大綱」自身、アメリカや韓国で他人の番号を盗用する「成りすまし」などの不正が社会問題化していることに言及し、「プライバシーの侵害や、成りすましによる深刻な被害が発生する危険性がある」とのべています。

  「大綱」はさらに、個人情報が本人の知らないところで結合されることで勝手な個人像がつくられる危険を指摘。個人が「自由な自己決定に基づいて行動することが困難になり、ひいては表現の自由といった権利の行使についても抑制的にならざるをえず、民主主義の危機を招く」という意見も「看過してはならない」とまでのべています。

 そうした重大な問題を含むにもかかわらず、東日本大震災からの復旧のさなか、なんの国民的議論もないままに大綱決定にいたりました。

 なぜ、強引にすすめるのか。実は、民主党は2009年の政策集で「不要あるいは過度な社会保障の給付を回避することが求められ」るとし、「このために不可欠となる、納税と社会保障給付に共通の番号を導入します」としていました。「細やかな社会保障」とは給付削減を効率的にやることであるのをはっきりと示しています。

 共通番号制度の導入を求めてきたのは財界です。日本経団連などは共通番号を使って、国民一人ひとりの負担と給付を把握する「社会保障個人会計」を提言してきました。社会保障の給付を、個人が負担した税金や保険料の範囲に限るという、社会保障とは相いれない考え方です。

 政府は、共通番号制度が必要な理由として、医療・介護・子育てにかかる負担を合算して負担に上限を設ける「総合合算制度」や、消費税率引き上げの際に低所得者へ税金を払い戻す「給付つき税額控除」の導入を口実にしています。

 しかし、低所得者に税金を後から返すなら、はじめから、低所得者に重くかかる消費税の増税をしなければいいのです。総合合算制度にしても、負担軽減のやり方はほかにいくらでもあります。共通番号制度のシステム開発に巨額の費用をかけ、プライバシーなどへの重大な懸念をおしてまでやる必要はどこにもありません。 (西沢亨子)





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