2011年6月22日(水)「しんぶん赤旗」

主張

東電福島原発事故

収束の手だて尽くしているか


 重大な事故を起こし、収束のめどがたたない東京電力福島第1原子力発電所での作業に、次々難題が持ち上がっています。

 原子炉格納容器を水で満たして冷却する計画は、容器の水漏れで早々に断念に追い込まれました。冷却のため大量の注水を続けているためたまっている、汚染したたまり水の浄化に設置した装置も思うように動いておらず、原子炉などに水を循環させて冷却させる計画も難航しています。作業にあたる労働者の深刻な被ばくも相次いでいます。政府と東電が事態の収束にあらゆる知恵と手だてを尽くしているかが問われています。

見通しの甘さは明らか

 切迫しているのは、原子炉建屋などにたまり続ける、汚染した水の処理です。東電は1、2、3、4号機の原子炉建屋やタービン建屋地下などのたまり水を処理するため、敷地内の集中廃棄物処理建屋などに移送する作業を進めてきました。移送先もほとんど満杯状態で、このままではまもなくあふれだすことも懸念されます。

 東電は、たまり水を浄化し油分や放射性物質を減らして、原子炉に循環させて冷却に使うことを計画しましたが、放射性物質の濃度が高く、本格運転からわずか5時間で停止してしまいました。汚染水が高い濃度の放射性物質を含んでいることを十分計算に入れていなかったためと見られ、その後もトラブル続きで、いまだに循環させる見通しは立っていません。

 地震と津波で原子炉の冷却ができなくなって、炉心の溶融(メルトダウン)や水素爆発を引き起こした原発を再び冷却できるようにすることは、事故収束の第一歩です。ところがそのための作業が再三にわたって見直しを余儀なくされているのです。もともと「安全神話」にとらわれて事故への備えを欠いていたことに加え、事故収束のために、あらゆる事態を想定し対策を準備する上で、甘さがあったのは明らかです。

 東電は先週末発表した3回目の「収束に向けた道筋」でも、7月中旬までに放出される放射線量を着実に減らす見通しを変えていませんが、相次ぐ中断はその実現さえ危うくしています。安定的な冷却がおこなわれなければ、次の段階で原子炉を冷温停止状態に持っていくのも遅れることになります。

 もともと、原子炉を冷却するために、大量の注水だけに頼るやり方には不安が出されていました。汚染水の処理も、原発内の施設に移送するだけでなく、臨時の施設を設けたり、浄化して循環させたりする方法に、もっと早くから取り組むべきだったという意見もあります。政府と東電はあらゆる知識を結集し、考えうる手段を総動員して対策にあたるべきです。

地下水対策も急ぐべきだ

 福島第1原発では建屋内などにたまっている汚染水だけでなく、原子炉格納容器や建屋から漏れ出した汚染水が地下にしみこみ、周辺を汚染する危険も指摘されています。汚染の拡大を防止するためには、汚染された地下水が原発の下から漏れ出さないよう遮蔽(しゃへい)壁を築くなどの対策が求められていますがまだ着手していません。東電は対策を急ぐべきです。

 対策が総動員できずに、汚染水の流出など事故を拡大する事態になれば大変です。事故収束には一刻の猶予も許されません。





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