2011年6月21日(火)「しんぶん赤旗」

世界で広がる 原発撤退

民自公は逆流の動き


 福島原発事故をうけ、ドイツ政府が2022年までの原発閉鎖を決め、イタリア国民は国民投票で原発再開を圧倒的多数で否決、日本でも国民世論は原発の「縮小・廃止」が圧倒的多数へと劇的に変化しています。にもかかわらず、日本の政治の舞台では、あからさまな逆流が民主、自民、公明を中心に起こっています。


政府・民主

停止炉の再開狙う

財界からも圧力

 「原発の安全性については国が責任を持って丁寧に地元に説明したい。原発の再起動をぜひお願いしたい」(海江田万里経済産業相、18日)

 「(海江田氏の考えと)まったく同じだ」(菅直人首相、19日)

 民主党政権による停止中原発の再稼働要求は、菅首相がいくら、「エネルギー基本計画」の白紙見直し、自然エネルギー重視への政策転換を表明しても、原子力依存の体制に何ら変更がないことを明白にしています。

 訪欧中の演説(5月25日)で原子力をエネルギー政策の四つの柱の一つに位置づけた菅首相。17日の参院復興特別委員会でも、日本共産党の紙智子議員が「いまこそ、原発からの撤退に向けふみだすべき」だと正面から迫ったのに対し、「原子力について安全性を徹底的に追求する」などとするだけで、最後まで原発を減らすとさえ言いませんでした。

 首相は自然エネルギーの割合を、2020年代のできるだけ早い時期に20%を超える水準にするといいます。しかし、現行の「エネルギー基本計画」でさえ、2030年までに19%に引き上げるとし、その一方で、原発を14基以上新設するとしているのです。「自然エネルギー重視」の首相の表明で原発が減る保証はありません。

 実際に政府がエネルギー政策の「見直し」をおこなっているのは首相が議長の「新成長戦略実現会議」です。同会議には、日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の“財界御三家”トップが名を連ね、これまで法人税減税など財界・大企業のための「成長戦略」を練ってきました。

 今月7日の同会議では、国家戦略室が作成した「革新的エネルギー・環境戦略について」なる資料が配られました。そこでは、今後の原子力について「原子力事故・安全の徹底検証」「最高度の原子力安全の実現」が掲げられました。「安全対策」がとられれば原発推進を続けるという、新たな「安全神話」の“復活”さえ示されました。

 これを受けておこなわれた議論では、「(原発の再稼働がなければ)経済成長も難しい」「当面の世界のエネルギー需給にとって、原発は不可欠」(経済同友会)「このままでは生産活動や投資意欲にも悪影響を与える」(日本商工会議所)など、財界から“脅し”と原発再稼働の大号令が。「政権という責任ある立場で考えなければならない」と引き取った菅首相の対応が問われます。

自民党

原子力延命に執念

変わらぬ“立役者”

 米国と財界いいなりに54基もの原発を建設してきた“立役者”である自民党はどうか。いまもこれにまったく反省がないことを象徴する発言が、14日に石原伸晃幹事長の口から飛び出しました。

 石原氏は会見で、原発撤退の動きを、「集団ヒステリー状態」とやゆし、イタリアの国民投票についても「国民投票をやりました。9割が反原発、やめましょう。そんな簡単な問題ではない」と言い放ったのです。

 同党の谷垣禎一総裁は震災直後の3月17日、「現状では、原発を推進していくことは難しい状況」と述べました。しかし今月1日の党首討論では、「私どもも原発政策を進めてきた」とした上で、「これは必然の選択であった。そして、これからも原子力エネルギーをやめてしまうということはできない」と、開き直りともいえる態度に出ています。

 これらの背景には、党内の原発推進派の動きがあります。

 4月に発足した自民党の「エネルギー政策合同会議」。委員長の甘利明元経済産業相をはじめ、メンバーには原発推進派がずらりと並びます。驚くべきは、同党参院議員を2期務め、現在は東京電力顧問の加納時男氏が関与していること。同氏は「むしろ低線量(の放射線)は体にいい」(「朝日」5月5日付)とまで言って原発を擁護する人物です。

 同会議事務局長の高市早苗衆院議員は公然と「いわゆる『地下原発』も、有力な『選択肢』の一つとして再検討してみる価値がある」などとし、あらゆる手段を使ってでも、原発を延命させる立場を鮮明にしています。

演説・政策 だんまり

公明党 推進に反省なし

 公明党は、2003年に「原子力発電を基幹電源として推進する」としたエネルギー基本計画を、自民党とともに策定しました。いっせい地方選では公約でもふれず、演説でもだんまり。自民党と同じで一度も反省を示しませんでした。

 同党は14日になって、「震災復興・日本経済再生に向けた総合経済対策」を発表。そこでは、「中期的な原発基幹型発電体制の見直し」を掲げ、再生可能エネルギーの導入促進をうたいました。

 しかし、原発からの撤退の方向性はなんら示されず、「化石燃料、太陽光など再生可能エネルギー、原子力をバランスよく活用(ベストミックス)することによって、経済活動の基板となる電力供給を安定させる」(斉藤鉄夫幹事長代行、「公明新聞」4月6日付)というこの間の立場を変えたのかどうかもまったくわかりません。





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