2011年6月8日(水)「しんぶん赤旗」

どうみる 菅政権1年

米国と財界に忠誠の末…


 菅直人民主党政権が発足して8日で1年。2日の内閣不信任案は否決したものの、足元の民主党内からさえ「月内退陣」を求める声があがるなど窮地に陥っています。しかし、それは米国と財界へ忠誠を誓う路線をひたすら走ってきた結果でもあります。東日本大震災という未曽有の事態を経てもなお、その路線を何ら変えず、政治の中身では、すでに自民党との“大連立”状態を生み出すところまで来ています。

消費税増税・TPP

止まらない露骨な要求

 大震災発生からわずか2カ月余。復興どころか救援すらままならない5月17日、菅政権は「政策推進指針〜日本の再生に向けて〜」を閣議決定しました。

 そこでは、「日本再生に向けた再始動」として、消費税増税のための「社会保障・税一体改革」で6月末までに成案を得ること、大企業の法人税減税などを推進する「新成長戦略会議」を5月から再開すること、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加の判断時期を総合的に検討することなどが掲げられました。

 菅首相は翌日の会見で、大震災で中断していた「一体改革」や「新成長戦略」について、再スタートを宣言しました。

 日本農業に壊滅的な打撃を与え、経済主権をアメリカに売り渡すTPP。閣議決定にもとづき5月19日に再開した「新成長戦略実現会議」では、日本経団連の米倉弘昌会長提出の文書「新成長戦略の再構築について」が参考資料として配布されました。それは、「TPP交渉への早期参加は震災を経て、むしろますます重要となっている」と、財界の露骨な要求が述べられていました。

米軍新基地建設

“米国以上に 米国的”に

 「地球規模や地域の問題に取り組むため、引き続き安全保障、経済などの分野で日米同盟を『深化』させたい」

 5月26日、フランスで開催されたG8サミットの場でオバマ米大統領と会談した菅首相はこう述べ、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への「移設」計画など日米同盟推進をあらためて表明しました。

 同「移設」・新基地建設は、「県内移設反対」という沖縄県民の総意を前に2014年の期限延長を余儀なくされています。さらに建設費が4000億円にも上ることもあり、米上院軍事委員会のレビン委員長でさえ「辺野古『移設』は非現実的で実行不可能であり、費用がかかりすぎる」と批判しています。

 菅首相の立場は、“米国以上に米国的”と言わざるを得ないところにまで至っています。

自民と違いなし

「大連立」の下地次々と

 「震災、原発について、スピード感をもった対応を進めていくためには、国会で幅広くご協力いただける体制が望ましい」

 6日、“女房役”の枝野幸男官房長官からも体制変更を宣告された菅首相。首相自身が民主と自民の「大連立」の障害物と見られています。

 しかし、「国民生活が第一」のマニフェストを見直し、4年間はやらないとしてきた消費税増税の方針に踏み込むなど、自民党との「大連立」の下地をつくってきたのが菅首相でした。

 1日の党首討論では、両党の関係を象徴するようなやりとりが行われました。

 菅首相 社会保障と税の一体改革について政府案を出せば、きちんと協議に乗っていただけるか。

 自民党・谷垣禎一総裁 私どもはすでに、(消費税増税の)ルビコンを渡っている。どうぞあなた方も渡っておいでになって一緒に議論しよう。

 首相が議長を務める政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」が、2015年までに2段階で消費税を10%に引き上げることを打ち出したのはその翌日でした。

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