2011年6月4日(土)「しんぶん赤旗」

72万テラベクレルの汚染水

20日にも流出の恐れ

福島第1原発 限度の327万年分


 東京電力は3日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)1〜4号機の建屋地下などにたまっている高濃度の放射能汚染水が、海などに漏れ出す危険性について検討した結果を発表しました。現在のペースで原子炉への注水を続けると、汚染水の一部を別の施設に移送しても20日に海への流出が懸念される状況になります。流出させないためには汚染水処理装置の稼働が急がれますが、稼働予定は15日で、それまで綱渡りの作業が続きます。

 それによると、1〜4号機原子炉建屋やタービン建屋の地下、移送先の集中廃棄物処理建屋などにたまっている汚染水の総量は計10万5100トン(5月末現在)。汚染水に含まれる放射性のヨウ素とセシウムの放射能は計72万テラベクレル(ベクレルは放射能の強さを表す単位。テラは1兆倍)で、同原発の外部への放出限度の327万年分にあたる放射能量です。

 東電は、原子炉建屋などでの汚染水の水位の変動や原子炉からの漏えい経路などの推定をもとに、今後の水位の変化を予測。別の施設に汚染水を移送するとした場合でも、早ければ20日にも海への流出が懸念される水位を超えるという結果でした。汚染水処理装置が予定通り15日に稼働すれば間に合う計算ですが、今回の試算には雨の影響が反映されていません。降雨があれば状況は「相当厳しくなる」としているものの、有効な雨水対策はとられていません。

 東電は2日、検討結果を経済産業省原子力安全・保安院に報告しました。

解説

流出防止 手だて尽くせ

 福島第1原発1〜4号機の建屋地下にたまっている高濃度放射能汚染水の全容が、初めて明らかにされました。予想されていたとはいえ、10万5000トンの汚染水に含まれている放射能が72万テラ(兆)ベクレルとは驚くべき量です。しかも、原子炉の圧力容器も格納容器も壊れ、溶融した燃料を冷やすために注いでいる水は筒抜けの状態で、日々、その量は増え続けています。

 東京電力は、15日以降、処理装置を通して放射能を低減したうえでタンクに貯蔵するほか、集中廃棄物処理施設に移送するので、たまり水を減らすことができるとしています。しかし、装置の処理能力は1日当たり1200トンにすぎません。集中廃棄物処理施設も、2、3号機のタービン建屋からこれまで移送した分で“満杯”状態です。計画どおりいくのか、疑問といわざるを得ません。

 そのうえ、東電がみずから行った予測で、処理装置が予定通り稼働できなければ、20日にもたまり水がいっぱいになることがわかりました。雨が降れば、さらに早まるといいます。最悪の場合、人間が近づけないほどの強い放射線を出す水が地表にあふれ出して海に流れ出す可能性は否定できません。

 福島第1原発からは、すでに、2、3号機の取水口付近から建屋地下のたまり水とみられる高濃度放射能汚染水が海に流出しました。意図的な汚染水の放出も行われ、漁業者から強い批判があがったほか、国際的な問題となりました。

 これ以上、海を放射能で汚染することは許されません。国と東電は、予定通り動かすことができるか確信のもてない処理装置だけに頼るのでなく、緊急時に備えて汚染水を入れることのできるタンカーを確保しておくなど、あらゆる手だてを講じることが求められます。(間宮利夫)

表




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