2011年4月14日(木)「しんぶん赤旗」

主張

大震災と日本経済

生活再建を最優先してこそ


 政府は4月の月例経済報告で「震災の影響により、このところ弱い動きとなっている」と、景気判断を引き下げました。

 東日本大震災が日本経済に与えた衝撃の大きさは、被災状況の把握が進むとともに、部品供給が止まった影響なども表面化して次第に明らかになっています。福島原発事故の影響も広がっています。

過去最大の落ち込みに

 月例経済報告の政府資料によると、被災地は就業者数7万4千人の水産業で岩手、宮城、福島を中心に壊滅的な状況です。水産業を支える造船も、ほぼ全域にわたって壊滅的と報告しています。農業の被害は2・4万ヘクタールの農地が海水で冠水するなど青森から三重まで16県に及び、畜産業や林業にも甚大な被害が出ています。

 津波被害が大きかった地域の就業者数は84万人に上ります。水産業や農業など被災地の基幹産業の被害を見ても、雇用が極めて深刻な状況にあることは明らかです。

 大震災で最も悲惨な被害を受けたのは被災地の住民であり、地域の暮らしと経済を支えてきた農林漁業と中小企業です。復興のためには、何より住民の生活再建こそ最優先すべきです。被災者への個人補償の抜本拡充とともに被災自治体への十分な財政支援、農林漁業・中小企業への従来の枠組みを超えた支援と補償が必要です。

 日銀が11日に発表したリポートは関東甲信越や東海でも、震災の影響や「計画停電」による「生産活動の大幅な低下等から厳しい状況にある」とのべています。ほかの地域でも被災地の部品メーカーの生産停止の影響や消費者の購買意欲の低下で停滞感が見られるとしています。

 8日に発表された内閣府の「景気ウォッチャー調査」では、景気の現状判断を示す指数が過去最大の落ち込みとなりました。

 菅直人首相は12日の記者会見で「自粛ムードに過度に陥ることなく、できるだけ普段どおりの生活をしていこう」と呼びかけました。しかし、被災者と被災地のことを思うとなかなか普段どおりにいかないことも事実です。被災地以外の国民が「普段」の気分を少しでも取り戻すためにも、被災地の生活と社会の再建に国の総力をあげてとりくむことが求められます。

 被災地の住民の暮らしと雇用の再建を土台に、日本経済の落ち込みも打開することが重要です。

停滞を打開する上でも

 日本経済は大震災の前から、大企業が巨額の利益をため込む一方で働く人の賃金が下がり続ける異常な構造によって長期停滞に陥っていました。この矛盾を広げ、日本経済の停滞をいっそう深刻にする方向では、復興のための財源もエネルギーも生まれません。

 政府は補正予算の財源として基礎年金の国庫負担率の引き下げを打ち出し、民主党は今後の財源として消費税増税を掲げています。これらは被災者にも負担増や給付減を迫るとともに、日本経済の矛盾を激しくするやり方です。

 復興財源は大企業・大資産家への行き過ぎた減税を是正し、米軍「思いやり」予算や原発推進経費を中止するなど、不要不急の施策を見直してつくるよう求めます。「震災復興国債」を発行して大企業に引き受けを要請し、滞留しているため込み金を活用させることも検討すべきです。





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