2011年4月2日(土)「しんぶん赤旗」

原発の危険を告発 国民の命守る日本共産党 (下)


独立した規制機関が必要

安全体制の根本的欠陥示す

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(写真)党首討論で、原子力の規制機関の役割についての資料を小渕首相に渡す不破委員長(当時)=1999年11月10日、衆院第1委員室

 日本の原子力開発が安全確保の上で世界から大きく立ち遅れているのには、原子力安全委員会が独立した権限と体制をもつ安全監視・規制機関とはなっていないことが根本にあります。日本共産党は原子力の安全確保の要の問題として、1976年の不破氏の国会質問で次のように提起しました。

 「これまでの原子力行政の根本転換を図る必要がある。そのためには、アメリカやイギリス、西ドイツ、フランスのように、原子炉の設計、着工、運転から、核燃料の運搬、将来の廃棄物の処理まですべてにわたって責任を一元的に負えるような、開発側とは結びつかない原子力の安全体制を緊急に確立する必要がある」(衆院予算委)

 独立した権限をもつ原子力の安全監視体制が日本に設けられてこなかったのは、国内の電力会社とアメリカの原子力産業が求める原発大増設計画のためだけではありませんでした。原子力の安全監視のための本格的な規制機関が生まれて動き出したら、日本に寄港する米の原子力空母や原子力潜水艦に対しても、国民の安全最優先の監視の条件が強まります。

 実際、1974年1月に不破氏が国会で分析化学研究所の放射線測定データのねつ造事件を取り上げてから、米原潜の入港は183日間にわたりストップ。同研究所が全面的に改組されるなど、原発や港湾の放射能汚染監視体制が一定の改革を受けることになりました。

 住民・研究者の要求と日本共産党の追及を受けた政府は、78年にようやく原子力安全委員会を設置しました。ところが、専門部会のメンバーは全員が非常勤という貧弱さ。当時でも1900人もの専門家や専任職員を擁した米国の原子力規制委員会の体制とは雲泥の差でした。

 99年11月、不破氏は党首討論で「原子力安全条約では、原子力の推進機関と規制機関を厳格に区別するよう定めている。日本の推進機関、規制機関は、それぞれ何か」と質問。当時の小渕恵三首相は、規制機関も推進機関も「通産省(現経済産業省)と科学技術庁(現文部科学省の一部)」だと答弁し、日本の安全監視体制が国際条約違反であることを認める結果となりました。

 この追及を受けた政府は2001年に、原子力安全委員会を内閣府の下に置く機構改革を実行。しかし、安全委員(5人)以外の各部門の専門委員はすべて非常勤です。安全体制の一部を担う原子力安全・保安院も、原発の推進機関である経産省資源エネルギー庁の下に置かれています。

 今回の福島第1原発の重大事故でも、保安院は、もっぱら東電側の説明をノーチェックで発表しているだけ。安全委員会も自らを「黒子」と称するほどで、国際条約が定める本来の役割を果たしていません。

新増設計画 白紙で検討

志位委員長に首相答える

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(写真)菅直人首相(右から2人目)に「提言」を渡す志位和夫委員長(左から3人目)、市田忠義書記局長(同2人目)、穀田恵二国会対策委員長(左端)。右端は福山哲郎官房副長官=3月31日、首相官邸

 志位和夫委員長は東日本大震災後、被災者、被災地への訪問をはさみ、3度にわたり政府への緊急申し入れを行い、このなかで福島第1原発事故を受けて、現地住民・自治体の声に応えた緊急要求の実現とともに、原子力行政の抜本転換を求めました。

 31日の菅直人首相との会談では、「東日本大震災にあたっての提言」を手渡し、「原子力行政、エネルギー政策の抜本的な転換を」求めました。「エネルギー基本計画」で14基以上の原発の新増設をめざすことは「きっぱり中止すべきだ」と迫った志位委員長に対し、菅首相は「白紙というか、見直しを含めて検討したい」と表明。従来の政府方針を根本的に検討する姿勢を示しました。

 「提言」は、今回の福島第1原発の事故について「『日本では重大事故は起きない』という『安全神話』をふりまき、安全対策をなおざりにして原発をやみくもに推進してきたこれまでの原子力行政による人災にほかならない」と指摘。(1)「安全神話」と決別し、原子力の危険性を直視した原子力行政を(2)原発総点検、原発新増設とプルトニウム利用の核燃料政策の中止(3)原子力の規制部門と推進部門の分離、強力な権限をもった規制機関の確立―を提起しました。

 菅首相は、原子力の推進部門と規制部門が一体となっている現状に対し「重大な反省が必要だ」と述べ、分離の重要性について「(志位委員長の)指摘を受け止めて(体制の)あり方の検討が必要だ」と答えました。





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