2011年2月11日(金)「しんぶん赤旗」

介護保険法改定案

生活援助とりあげ招く

給付費削減の強力な手段に


 要支援者が多く利用している介護保険サービスのなかに、ホームヘルパーによる掃除・洗濯・調理などの生活援助があります。政府が導入を狙う、市町村の判断で要支援者を保険サービスの対象外にできる仕組みは、ヘルパーの生活援助をとりあげることにつながります。

全員保険外も

 現在は、要支援と認定された人には保険サービスを受ける権利があります。しかし、見守りや配食などをボランティアに担わせる安上がりな「総合サービス」を新たに導入した市町村では、要支援者が保険サービスを受けたくても受けられず、「総合サービス」の対象とされる可能性があります。要支援者が利用するのが保険サービスか「総合サービス」かを1人ずつ判断した結果、全員が「総合サービス」の対象となり、要支援の保険サービス利用が皆無になる可能性も「理論的にはありうる」(厚労省振興課)とされています。

 これは、要介護認定で要支援と認定された人を、市町村判断で保険サービスの対象外にできる仕組みであり、給付費削減の強力な手段にされる危険があります。

一貫した狙い

 ヘルパーによる生活援助は単なる家事の代行ではありません。支援を必要とする高齢者とコミュニケーションをとり、心身の状態を把握し、状態に応じて働きかけることにより、生きて活動する意欲を引き出す専門労働です。

 ところが政府はことあるごとに生活援助の意義を過小評価し、傷つける見解を公にしてきました。

 厚労省は、7日の社会保障審議会介護給付費分科会で、保険サービスを限度額いっぱいに使っている利用者のケアプランについて、わずか4人の自治体職員による紙の上での評価に基づき、「生活援助が多すぎる」「何をやっているかわからない」と非難する資料を公表しました。

 法改定に向けて議論した社会保障審議会介護保険部会(昨年8月)では、ヘルパーによる生活援助(調理)と弁当を届ける配食サービスを同列に並べ、「(東京都)品川区では、訪問介護の生活援助(調理)の費用は、保険外の配食サービスに要する費用に比べて、高くなっている」と、生活援助を攻撃する資料を出しました。

 今回の法改定の背景には、このような政府・厚労省の生活援助攻撃と保険外し、給付費削減の一貫した狙いがあります。

運動広げ阻止

 厚労省は表向き、今回の法改定で「総合サービス」を新設する目的について、現行制度で不十分な要支援者への見守り、配食や非該当者へのサービスを「多様に提供する」ことだと説明しています。

 現行制度が不十分で多様なサービスが必要なのは事実です。だからといって、ボランティアによる配食など安上がりの「総合サービス」と引き換えに、ヘルパーによる生活援助など現行の保険サービスを要支援者からとりあげるというのは、保険給付の切り下げにほかなりません。

 現状でも市町村が独自の「ローカルルール」をつくってヘルパーの生活援助の支給を厳しく制限する例が全国にあります。「総合サービス」は、生活援助をとりあげて給付費を削減する新たな手段にされかねません。

 一方、民主党政権はいっせい地方選での審判を恐れ、利用料倍増などの改悪案は取り下げざるをえませんでした。「総合サービス」についても政府内にさまざまな意見があり、「法案の具体的な中身は変わりうる」(厚労省)としています。

 要支援者から保険サービスをとりあげる法案を国会に提出させないよう、国民の世論と運動を広げるときです。(杉本恒如、内藤真己子)





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