2011年2月3日(木)「しんぶん赤旗」

「古典教室」不破社研所長の第3回講義

マルクスの経済闘争論から日本社会が見える


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(写真)「古典教室」第3回の講義をする不破哲三社会科学研究所所長=1日、党本部

 1日に開かれた第3回「古典教室」で不破哲三社会科学研究所所長は冒頭、受講者仲間に「わからないところを教えてあげた」という感想を紹介しました。「2万5000人の“連帯教室”として、前回のべた『覚悟』とともに『連帯』を強調したい」と話すと、会場からホッとした笑いが起きました。

 この日の講義は、テキスト『賃金、価格および利潤』の3回目で、第12章から第14章。資本家と労働者の闘争論が展開され、「現代的な教訓がいっぱい詰まっています」と語りました。

 不破さんは、30年前にロンドンで入手した英文のインタナショナル(国際労働者協会)の議事録を手に、このテキストの話は、各国の労働者代表からなる同評議会の席での報告で、「まるでマルクスが経済闘争の司令官のように見える」と強調しました。

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 第12章では、賃金引き上げが物価を上げるという議論に対し、労働者の賃金の引き上げは商品の価値には影響しないことをホワイトボードで解説し、「今でもこの原理がわかっていれば会社と交渉するときに性根がすわる」とのべました。

 第13章では、経済闘争に労働組合がどう対応するか、いろんな場面に応用がきくように話したところだと語りました。

 1日の労働時間を示す「労働日」について、資本家は肉体的に最大限まで延長しようとするが、「時間は人間の発達の場である」というマルクスの言葉(別項)を紹介し、労働時間の短縮と人間的な生活との関係の深く大きな意味を、『資本論』の叙述も引用して力をいれて説明しました。

 本部会場で聞いていた東京の26歳の女性は「自分を発達させようという自覚、自主的な行動がないと資本家のために労働をささげるだけになってしまうと感じた」と感想を寄せています。

 ここで不破さんは、賃上げ闘争が主で時短や労働強化反対のとりくみが遅れているのは、日本の労働運動の大きな歴史的弱点だと指摘し、立ち入って解明しました。これに対して、労働組合の役員をしている30歳の男性は「労働時間の上限が決まっていないことが、今の日本のさまざまな問題を引き起こしているとの指摘に納得」と書くなど、労働組合関係者から共感の声が寄せられています。

 イギリスの労働者が「半世紀の内乱」といわれたほどのたたかいの結果、それ以上働くことを禁じた10時間労働法を獲得したことと比較して、日本では戦後に労働基準法をつくったものの、8時間を超えても25%の残業手当を出せばよいということで、いまでも長時間労働が続いていると指摘しました。

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 第14章の「資本と労働との闘争とその結果」では、労働力の価値は生理的要素と社会的・歴史的要素からなっているとのべ、労働者のおかれた条件の国際比較をしながら解説を加えました。

 自動車産業の労働者の時間当たり賃金は、日本は、アメリカの半分、ドイツの3分の1だと指摘。アメリカで工場をもっている日本の大手自動車会社は日本の2倍の賃金を払いながらもうけをあげている。それなのに、日本では半分の賃金しか払わず、まるで払いすぎているような顔をしていると痛烈に批判すると、会場では息をのんで聞き入る人の姿も。

 不破さんは、最近の日本とヨーロッパ諸国との年間平均労働時間を比較し、独、仏、英3国の平均労働時間は日本より500時間も少ないことを解説。日本でサービス残業をなくせば200万人の雇用が生まれ、労働時間をヨーロッパ並みにすればさらに1700万人以上の労働者が求められ、合計1900万人の雇用が必要で、財界は労働者不足に悩むことになるとのべました。これが日本の「ルールなき資本主義」の実態で、前回の講義の感想で若い人から多く出された労働者の生活の維持、再生産もできない実態とも関係していると話しました。

 名古屋市で視聴していた男性は、「自分たちの子どもの働かされ方をみても、一方では朝早く出勤し、深夜に帰宅し、そのほとんどがサービス残業。もう一方は定職につけず、とても結婚などできない賃金になっている」と実感を込めて語りました。

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 イギリスで10時間労働法をかちとり、資本の横暴から労働者と家族を守った制度をマルクスは「社会的バリケード」と特徴づけました。そして、ロシア革命、フランスの人民戦線時代、国際連合、女性差別撤廃条約など「社会的バリケード」を発展させた歴史をたどりました。「ルールある資本主義」となっているヨーロッパと違い、日本では、専制政治や労働者が無権利状態だった歴史と重なったことを示し、「社会的強制」「全般的な政治行動」の必要性を浮き彫りにしました。

 新潟の30歳の男性は「『社会的バリケード』であるルールをつくっていくことが、なぜ大切なのかよくわかりました。少子化問題までマルクスの目で見ると解決方向が見え展望がもてます」と語っています。

 不破さんは、マルクスが労働者が自らの生活と権利を守るとともに、それを抜本的に解決しようとして新しい社会、働くものが主人公となる社会主義へと行きついたこと、同時に社会主義を見定めながら、当時労働組合の必要を主張した唯一の人であるとのべ、労働者の闘争を励まし、「社会的バリケード」の考えを打ち立てるなど、理論と実践に力を注いだ革命家であると結びました。

 神奈川の52歳の男性は「資本主義社会のなかで、労働者がたたかうこと、経済闘争だけでなく政治闘争にかかわらなければならないこと、とにかくたたかうことの重要性を感じました」と感想を寄せました。


「時間は人間発達の場」に大きな反響

 「時間は人間発達の場である」(新日本古典選書、170ページ)―。不破さんが講義のなかで「すごい言葉だと思う」と紹介したマルクスの言葉に、「この話にまつわる話は胸にズシンと響きました」(京都の女性)、「ここに『未来社会探求の原動力』があるという指摘は、若い世代を激励するもの」(東京・男性)など、受講者から大きな反響がありました。

 マルクスは、これに続けて「思うままに処分できる自由な時間をもたない人間、睡眠や食事などによるたんなる生理的な中断をのぞけば、その全生涯を資本家のために労働によって奪われる人間は、牛馬にもおとるものである」と書いています。





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