2011年1月31日(月)「しんぶん赤旗」

NHK「日曜討論」

笠井政策副委員長の発言


 日本共産党の笠井亮政策委員会副委員長(衆院議員)が30日のNHK「日曜討論」で行った発言は次のとおりです。


年金・国保・後期医療…社会保障切り捨てに舵

 総額92兆円にのぼる2011年度予算案のうち国債発行が44兆円にのぼる問題などが議論に。桜井充財務副大臣は、「公共事業のなかでも、道路や港など経済の活性化に資するものは減額しないようにしている」などと説明しました。

 笠井氏は、次のように述べました。

 笠井 今回は政権交代をして民主党が初めてつくった予算案です。ところが、「国民の生活が第一」といいながら、そうなっていないのが一番の問題です。

 暮らしがこんなに大変なときに、社会保障について削減の傷口を直していくという公約を投げ捨てて、むしろ切り捨てる方向に舵(かじ)を切ったという大問題があります。

 たとえば、年金支給額を引き下げ、国保料は値上げになる。それから後期高齢者医療制度は廃止どころか、お年寄りを年齢で差別する仕組みを温存したまま、さらに70歳から74歳の方の窓口負担は倍になります。

 他方で、お金がないといいながら、菅政権が真っ先に決めたのは、法人税の5%引き下げで1兆5000億円もの大企業への減税バラマキを行い、証券優遇税制も2年間延長で大資産家への減税を続ける。米軍への「思いやり予算」も延長です。これでは自民党政治と変わらず、財界、アメリカ優先という基本姿勢を引き継ぐものになっています。

子ども手当――矛盾だらけの制度の見直し必要

 3歳未満への子ども手当を2万円に「増額」する政府案に関連し、子育て支援のあり方が焦点に。出席者の間で「現金支給」がいいか、「現物支給」がいいかなどの議論が交わされました。

 笠井氏は、子ども手当の問題点について、次のように指摘しました。

 笠井 子育てに十分な財政支援は当然必要です。しかし、民主党がやってきたこの政策は大きな矛盾があります。

 (手当の)一方で、年少扶養控除などを廃止するといいます。「右のポケットから取って左のポケットに入れる」というやり方では、3歳までは負担増になるということは、われわれがいってきたことなんです。

 同時に、認可保育所を増やして待機児童をなくすなどの「現物支給」をきちんとやらなければ、本当の子育て支援にはなりません。ここが大きなポイントだと思います。

 ところが今回、その矛盾を抱えたまま1年間だけ(の立法)ということです。そういう矛盾だらけの制度を見直して出しなおす必要があると思います。

 これに対し桜井副大臣は、「みなさんのいっていることは理解できる」「党内でも議論しなければいけない」などと述べました。

大企業・大資産家バラマキ減税2兆円を国民に

 予算案や関連法案の「修正」について問われた桜井副大臣は、「柔軟に対応していく」と表明。笠井氏は次のように主張しました。

 笠井 いまからでもやるべきは、「国民の生活が第一」というのだったら、そういう修正、組み替えをやるべきです。

 大企業や大資産家へのバラマキ減税分は、あわせて2兆円もあります。それがあれば、やれることはいくつもあります。民主党が公約したことでもできることはあります。国民健康保険料を1万〜2万円引き下げるとか、後期高齢者医療制度も廃止できます。さらには、年金支給額の切り下げをやめ、子どもの医療費の無料化もさらに広げるとか、子育てでいえば、保育所を増やして待機児童を解消することも実現できます。そういう組み替えをやるべきです。

 菅総理は、法人税減税について、“雇用に振り向け、投資につなげる”といわれましたが、財界にそれをいったら、一蹴されました。これでは単に、また積み増しで内部留保を増やすだけです。そうではなく、暮らし、社会保障に回すべきです。

社会保障削減でなく拡充するのが国の責任

 菅直人首相が施政方針演説で超党派協議を呼びかけた消費税増税を含む「税と社会保障の一体改革」の問題点を問われた笠井氏は、次のように批判しました。

 笠井 菅総理の話がありましたが、やはり年金、医療、介護などは、憲法25条(が保障している)生存権の問題ですから、社会保障は削減から拡充へというのが国の責任であり、きちんとやるべきだということを大きな太い柱として据えなければいけません。

 一方では社会保障切り捨てを続けながら、他方では大企業に減税のバラマキをやる。そして、結局は“その財源は消費税で”という増税の方向は論外だといいたいんです。

 消費税というのは、いうまでもなく所得の低い方ほど負担が重い。そして大企業は(消費税額を価格に)転嫁しますから1円も負担しません。社会保障のために低所得者からお金を消費税で取るなどというのは、全然筋が通らないおかしな話です。そんなことをしたら、もう(菅首相がいう)“最小不幸社会”どころか“最大不幸社会”になってしまいます。

 いまやるべきは消費税増税ではなく、大企業・大資産家へのゆきすぎた減税を正し、応分の負担を求めることでしっかり財源もつくることであり、そこが本当にカギだと思います。

最低保障年金―財源は法人税など応分の負担で

 また、消費税を全額最低保障年金に充てるという民主党政権の「年金制度設計」をめぐり、笠井氏は次のように述べました。

 笠井 財源は消費税だけではありません。所得税とか法人税があります。そこは応分の負担でやるべきです。

 われわれの提案は、最低保障年金として当面は月額5万円、それに加えて掛け金に応じて上乗せをするというもので、それはできると思います。

証券優遇税制―なぜ20%に戻さないのか

 自民党の鴨下一郎政調会長代理は、「保険(料)方式の足らざるところを(消費税を含む税方式で)十全なものにしていくことを議論するなら、非常に建設的だ」と評価。公明党の石井啓一政調会長は、同党も社会保障問題の与野党協議を民主党に呼びかけていると述べつつ、「安定的な財源確保」のためには「消費税を含む税制の抜本改革、これはやっぱり必要だ」などと発言しました。

 笠井氏は、社会保障財源を消費税増税に依存する姿勢に固執する民主党政権について、次のようにただしました。

 笠井 負担というと、どうして消費税になるのか、ぜひ桜井さんに一言聞きたいと思っていたんです。

 証券優遇税制があります。20%から10%に軽減しています。その期限がくるということで、五十嵐(文彦)財務副大臣も昨年、“これはもう戻すのは当然だ”と、20%に戻すといっていましたが、結局やらなかったでしょう。なぜやらないんですか。

 桜井氏は、金融庁や自見庄三郎金融・郵政担当相、「関係者の方々」からの「相当強い要望があった」ために「今回は延ばさせていただいている」などと述べました。





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