2010年12月28日(火)「しんぶん赤旗」

経団連の労働法規委 なに狙う

「ただ働き」合法化主張

“名ばかり管理職”の拡大も


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(写真)財界の動きを伝える日本経団連の機関紙「日本経団連タイムス」

 日本経団連(米倉弘昌会長)が、年の瀬も押し詰まった今月後半に、労働関係の二つの会合を開きました。なにかと忙しい年末に、わざわざ開催した会合。何を議論しているのでしょうか。

 二つの会合は、17日開催の労働法規委員会労働法企画部会と、21日の労働法規委員会です。いずれも労働法に関わる会合です。

労働時間法制

 経団連のホームページには、労働法規委員会の主な活動は、「労働時間法制のあり方の検討」とあります。

 経団連は、今年5月末の定期総会で新体制になりました。総会後の記者会見で、労働法規委員会委員長に就任した日本電信電話社長の三浦惺副会長は、こうのべています。「雇用情勢はいまだ厳しいが、雇用の流動性、多様化が今後の大きな課題になる。その観点から、労働法規について、積極的に提言していきたい」

 その2週間後に開かれた労働法フォーラム(経団連主催)では、二つのテーマを経営法曹会議所属の弁護士が報告。労働者派遣法に関するものと、労働時間管理のあり方についてでした。労働者派遣法については、国会に改正法案が提出されていたので、その対応策とみられます。

 労働時間管理については、三上安雄弁護士が報告。注目されるのは、残業代も企業の労働時間管理も不要となる管理監督者の対象を大幅に広げるべきだと主張していることです。

 管理監督者は、労働基準法41条で定められた労働時間規制の適用除外(深夜労働は対象)で、その対象は判例などで厳しく制限されています。(1)事業主の経営に関する決定に参画し労務管理に関する指揮監督権限が認められること(2)労働時間について裁量権があること(3)その地位と権限にふさわしい待遇がなされていること―などです。

 サービス残業の取り締まりが強化されるもとで、企業は労働時間の裁量権などがない労働者を、残業代不要の管理監督者扱いにしてきました。社会問題となったいわゆる“名ばかり管理職”です。

企業が決める

 三上弁護士は、2008年に日本マクドナルドの店長は管理監督者に該当しないとした東京地裁判決を問題視します。裁判は、実際には裁量のない店長の管理監督者性を否定し、残業代の支払いを企業に求めました。

 これを三上弁護士は、「適切でない」と批判し、「職務内容が少なくともある部門全体の統括的な立場にあること」をもって判断することが適切だとのべています。残業代も企業の労働時間管理責任も不要の管理監督者は、企業が決めるべきだとする主張です。

 8月末には、来年1月に発表予定の「経営労働政策委員会」報告の審議を開始。「企業の競争力と付加価値を高める方策を考えていくことが重要」としています。

 労働法規委員会は、9月中旬には「労働法制の近未来」と題した講演会を開催。報告した荒木尚志東大教授は、今後労働法制は法規制だけでなく、「当事者の労働条件設定を尊重する手続き規制を組み合わせることが必要」とのべました。以前から財界が求めている「法律でなく、労使自治で」の主張と同じです。

 経団連は10月に政府へ提出した「規制改革要望」のなかで、裁量労働制の拡大を、雇用・労働分野の第一にあげています。

 裁量労働制は、実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ労使がきめた時間を働いたとみなす制度。企業にとっては、裁量労働制も管理監督者も、「ただ働き」を合法化できるという点で共通しています。

 こうした会合の結果がどういう形となってあらわれるか、今後の経団連の動向に注目する必要がありそうです。 (畠山かほる)





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