2010年12月15日(水)「しんぶん赤旗」

アジア政党国際会議と日本共産党の貢献

志位委員長の演説から


 日本共産党の志位和夫委員長は、12月9日の横浜、12日の仙台、13日の山梨・昭和町の演説会のなかで、アジア政党国際会議における日本共産党代表団の活動についてのべました。その部分を加筆、補正をして紹介します。


アジアで活動する合法政党が与野党の別なく一堂に会するユニークな国際会議

 みなさん。いま日本共産党が訴えている平和の主張は、実はアジアと世界では当たり前の流れ、本流の流れになっているのです。

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(写真)演説する志位和夫委員長=9日、横浜市

 私は、12月1日から4日までカンボジアのプノンペンでおこなわれた第6回アジア政党国際会議というものに出席してまいりました。せっかくの機会ですので、若干の時間をいただいて、報告させていただきたいと思います。(大きな拍手)

 この国際会議は、ICAPP(アイカップ)と略称で呼ばれるのですが、アジアで活動するすべての合法政党が与野党の別なく一堂に会するという、たいへんユニークな国際会議なのです。

 2000年にフィリピンのマニラで第1回総会が開かれ、今回が第6回総会になるのですが、私たち日本共産党はこの会議をたいへん重視しまして、02年のタイ・バンコクの総会には緒方(靖夫国際局長=当時)さん、04年の中国・北京の総会には不破(哲三議長=当時)さん、06年の韓国・ソウルの総会、09年のカザフスタン・アスタナの総会、そして今回のカンボジア・プノンペンの会議には、私が団長として参加しました。

 プノンペンのICAPPの総会には、36カ国89政党が参加し、主催国カンボジア、マレーシア、ネパールからは現職首相、インドネシア、フィリピンの前・元大統領など首脳級の方々が参加し、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長がビデオ・メッセージを寄せるという会議となりました。

 総会では、各国政党代表が発言します。私は、「アジアと世界の平和と繁栄をめざして」と題して、東南アジアから北東アジアに平和の流れを押し広げること、貧困と気候変動の解決にむけた先進国の責任、核兵器禁止条約の締結をめざす国際交渉の開始をよびかける発言をおこないました。

 ICAPP総会は、「プノンペン宣言」という文書を全会一致で採択したのですけれども、日本共産党代表団は、大きくいってつぎの二つの問題で、総会が成功をおさめることに貢献することができたと思います。

「核兵器禁止条約の交渉を支持」――日本共産党の提案が実った

 一つは核兵器の問題です。「プノンペン宣言」には、「核兵器禁止条約の交渉を支持する」という一文が明記されました。

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(写真)アジア政党国際会議の閉幕総会終了後、壇上で「プノンペン宣言」の採択を祝福し手をとりあう志位和夫委員長(左)と鄭義溶(チョン・ウィヨン)常設委員会共同議長(韓国、右)。(左から)サイード宣言起草委員長(パキスタン)、カエウ・フンシンペック党首(カンボジア)=3日、プノンペン(面川誠撮影)

 この要求というのは、原水爆禁止世界大会や日本共産党が掲げてきた根本要求です。すなわち、「核兵器のない世界」を実現するためには、核兵器廃絶を正面から主題とした国際交渉――もっと具体的にいえば核兵器禁止条約の国際交渉を開始することが必要だということを、私たちは根本要求として掲げてきたわけですが、国際会議でこの旗印が全会一致で採択されたということは、世界でも初めての出来事だということを私は紹介したいと思うのであります。(大きな拍手)

 今年5月にニューヨークの国連本部で核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれ、私たちも参加しました。

 そこでも私たちは、「核兵器廃絶を主題とした国際交渉の開始を」ということを会議主催者や各国政府に要請しました。NPT再検討会議で全会一致で採択された「最終文書」では、この方向に向けての重要な一歩前進が刻まれました。

 同時に、「最終文書」では、「核兵器禁止条約の交渉」の提案(潘基文国連事務総長の5項目提案)については、「注目する」という表現までは書いたんだけれども、「支持する」というところまではいかなかったんですね。一部の核兵器保有国の抵抗もあって、なかなか全会一致での合意にはならなかったのです。

 「注目」と「支持」は違うでしょう。「注目」というのは「よく見る」というところまでです(笑い)。「支持」というのは「一緒になってやりましょう」ということです。(拍手)

 ですから、こういう中身が与野党の別なく政党が参加したアジアの国際会議で全会一致で採択されたことは、私は画期的なことだといっていいと思うのであります。(大きな拍手)

 実は、これは日本共産党の提案が実ったものなのです。11月の中旬に私たちのもとに「プノンペン宣言」の原案の文書が届けられました。それは全体として、貧困の問題や地球温暖化の問題、平和の問題など良い内容だったのですけれども、残念なことに核兵器の問題が書かれていなかったんです。

 これはなんとかしなければならないと思っていたところに、ICAPPの事務局長(共同議長の一人)を務められている鄭義溶(チョン・ウィヨン)さんという方が私たちの党本部に来訪して懇談になりました。私が、「ぜひ『プノンペン宣言』に核兵器の問題を入れたいのです」といいますと、「それは大歓迎です」ということになったんです。

 そこで私は、鄭義溶事務局長と、ICAPPの「宣言」の起草委員長を務めているパキスタンのムシャヒド・フセイン・サイード・イスラム連盟幹事長に書簡を書き、つぎのような内容を「プノンペン宣言」に盛り込むことを提案しました。

 「われわれは、今年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議で全会一致で採択された『最終宣言』に明記された『すべての国が核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するために特別な取り組み』をおこなうという国際社会の合意、ならびに核兵器禁止条約の交渉を提案している国連事務総長の5項目提案を支持し、核兵器のない世界をめざす取り組みの発展を重ねてよびかける」

 その後、私たちが日本を出発する前の日の11月29日に、「プノンペン宣言」の最終案が、私たちのもとに送られてきました。それを見ますと、私たちの提案がほとんどそのまま最終案に取り入れられているではありませんか。(どよめきの声、拍手)

 私は、それを見て本当にうれしい思いでした。ですから私は、プノンペンでのICAPP総会での発言で、「プノンペン宣言」のこの部分について「心から歓迎します」という発言をいたしました。そして、全会一致での採択になったというのが経過であります。(大きな拍手)

 日本共産党の提案が実って、「プノンペン宣言」には、核兵器問題で、NPT再検討会議の到達点を上回る、世界で最も先進的な内容が盛り込まれることになりました(大きな拍手)。ICAPPは政党間の国際会議であり、政府間の国際会議とはもちろん性格が異なりますが、この「宣言」は、「核兵器のない世界」にむけた国際社会の努力、世界の平和運動を激励するものになると思います。(拍手)

朝鮮半島問題――「すべての当事国が直ちに対話と交渉を」とよびかけ

 いま一つ、このICAPPの総会で問題になったのは、朝鮮半島の問題でした。総会では、直前に起きた北朝鮮による砲撃事件も議論になり、この問題にどう対応するかが問われることになりました。

 この会議には、韓国の政党代表(ハンナラ党)、北朝鮮の政党代表(朝鮮労働党)、両国から政党代表が参加しています。いま南北両国の代表が同席する国際会議というのはなかなかないんですよ。そのもとで激しい議論がおこりました。

 韓国の政党代表は北朝鮮を厳しく非難する演説をおこないました。北朝鮮の政党代表はそれを激しく攻撃する演説をおこないました。総会は緊張状態になりました。韓国、北朝鮮と発言がつづいてその何人か後に、私の発言の順番が回ってきました。私は、つぎのようにこの問題について発言しました。

 「国連憲章に反する軍事的挑発行為は、もとより厳しく退けられなければなりません。同時に、紛争の外交的、平和的解決のために、6カ国の緊急会合をもつことが大切です」

 端的にこういいました。わが党は、北朝鮮による軍事的挑発行為を厳しく批判する声明を出しております。ただこのICAPPという会議は、政治的立場の違う政党が、互いに他を非難する会議でなく、一致点を見つけ出し協調・協力をはかるという性格の会議です。私は、会議のそうした性格を考えて、名指しの非難ではなく、「国連憲章に違反する軍事的挑発行為」を許さないという表現に、私たちの北朝鮮への批判の立場を込めました。こういえば、名指しをしなくても多くの参加者に私たちの立場が伝わるわけですね。同時に、解決方法としては、“緊急に対話のテーブルに着こうではないか”ということを呼びかけました。

 これが私の発言だったわけですが、翌日には、さらに韓国側から激しい北朝鮮非難の発言がおこなわれました。そういうもとで、この問題を「プノンペン宣言」でどう扱うかが、会議を運営する常設委員会でも議論になったということでした。

 そういうなかで、会議を運営している常設委員会の事務局から、私たちの代表団に対して、「事態打開には貴党の志位委員長の発言の線しかないですね」(拍手)といってくるんですね。私たちは「その通りです」(笑い)、「その線でまとめてください」(笑い、拍手)とのべ、この問題の定式化には日本共産党の発言でのべた内容しかないということを、重ねて議長団に具体的に提案しました。

 議長団もいろいろと知恵をしぼったようです。最終的には、「プノンペン宣言」にはつぎのような内容が盛り込まれました。

 「朝鮮半島における最近の挑発や軍事行動に関してICAPP総会は、すべての当事国が直ちに対話と交渉を通じて状況を鎮静化するようよびかける(拍手)。ICAPP総会は国際社会にたいし、この問題での国連事務総長の声明に沿って、武力行使の再発を防ぐよう強く促す」

 これは会議の知恵と忍耐による、困難を打開しての適切な定式化だと思います。ここには名指しはしていないものの軍事挑発への批判が込められています。そして、“すべての当事国が直ちに対話と交渉のテーブルに着こう”ということを、南北の政党代表が出ている総会で確認されたことの意義は大きいのではないでしょうか(大きな拍手)。会議がこうした適切な定式化をするうえで、日本共産党代表団の活動が一定の貢献をしたことは、うれしいことでありました。

 軍事挑発は許されないが、それに軍事的に対応することも良くない。戦争にしてはならない。直ちに対話と交渉のテーブルに着こう。これが確認された。ICAPPというのは政党間の会議ですけれども、こういうことが韓国と北朝鮮も含めて確認された国際会議というのは、この会議がはじめてであります。

 「もめ事は外交的・平和的に解決する」――これは決して理想論ではない。正面から取り組めば可能なのです。そして、ここにこそ世界とアジアの本流があるのです。

 こうして、私たち日本共産党代表団は、核兵器問題と朝鮮半島問題という二つの平和の大問題で国際政治に働きかけ、会議が前向きの成果を収めることに貢献したということをご報告したいと思います。(大きな拍手)

日本共産党の野党外交が、日本政府の外交になる日をめざして

 そのせいかどうかはわかりませんが、総会が終わった夜の晩さん会の時に、ICAPP創設10周年にさいして、それに貢献した各国の政治家を表彰するセレモニーがあったんです。ずらりと各国の首相や政権党の政党代表などが金色のメダルをもらうんです。(笑い)

 そうしたら突然、私の名前が呼ばれまして、「ICAPP10周年貢献賞」というメダルをいただきました(笑い、拍手)。生まれて初めて(笑い)もらったメダルですが、そういうふうに日本共産党の活動を会議の主催者も評価してくれたということだと思います。(拍手)

 私たちは、多くの友人を得ることもできました。総会が閉会した翌日、12月4日に、私たちはアンコール遺跡を訪問したわけですが、これはただ単に観光に行ったわけではないんですよ(笑い)。これは会議参加者がみんなで行くんです(笑い)。各国の首相や政党首脳などと一緒に歩きながら、歩く途中でも会談しながらアンコールの遺跡を見学する、いわばこれも「外交活動」なのです。

 私も、アンコールに行く飛行機のなかで、また遺跡のなかを歩きながら、各国政党代表とずいぶんと親しく話す機会がありました。これはASEAN(東南アジア諸国連合)流のやり方だと聞きました。

 ASEANでは、会議が終わった後、名跡を訪問したり、リゾートに行くなどの日程が通常組まれるといいます。それは、遊びではなく、会議の延長として、「グリーン・セッション」とさえいわれる。そこで、問題を解決したり、今後の問題を非公式に協議することが多いといいます。

 またそういう取り組みで親しくなれば、いざもめ事が起こっても戦争にはならない。話し合いで何でも解決することができるようになります。これがASEAN流の外交なんですね。私は、これはとてもいいなと思いました。(拍手)

 私は、私たちが取り組んでいるような野党外交が、早く日本政府の外交になる日を一緒につくろうではないかということを心から呼びかけたいと思います。(「そうだ」の声、大きな拍手)


 ()全会一致で採択された「プノンペン宣言」は、冒頭部分にのべられている「われわれが順守する原則」という項目で、「われわれは、……わがアジア大陸における平和、安全、安定、繁栄を、以下のような原則を順守することによって保障することを誓約する」とのべ、「すべての国の主権と領土保全」「自らの政治、経済、社会制度を決定するすべての国の権利」「不可侵および、互いの内部問題への不干渉」「領土紛争の平和解決および国際条約と国際法の尊重」などの原則を列挙し、それにつづけて、核兵器問題についてつぎのように明記しました。

 「われわれは、とりわけ、2010年NPT再検討会議の最終文書で述べられているように『すべての国が核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するための特別な取り組みが必要である』との国際的合意、および核兵器禁止条約の交渉を含む国連事務総長の5項目提案を支持する」





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