2010年12月8日(水)「しんぶん赤旗」

若手研究者たちのシンポから

政策に声を上げはじめた


写真

(写真)米カリフォルニア大学でポスドクの組合ができたニュースを載せた英科学誌『ネイチャー』9月2日号。記事には、同大学に6500人のポスドクがいると書かれています。

 博士課程修了後に短期契約で研究するポスドク(ポストドクター)などの雇用問題、今年の事業再仕分け、来年度予算の政策コンテストでの評価など若手研究者をめぐる環境が厳しくなっています。若手研究者みずからが科学技術政策に対して積極的に発言しようというシンポジウムがありました。

減る若手教員

 「新しい科学技術政策と若手研究者の役割」と題されたシンポジウムは先月20日、東京都江東区の日本科学未来館で開かれました。主催は昨年6月に発足した日本学術会議若手アカデミー委員会です。ドイツやオランダで30歳代を中心とする若手研究者で構成するアカデミー(学術団体)が活発に活動していることから、日本でのあり方を議論しています。

 シンポジウムではポスドク問題などを発言し続けている榎木英介・サイエンス・サポート・アソシエーション代表の講演と、人文や自然科学系の若手研究者によるパネルディスカッションが行われました。

 榎木氏は、科学技術政策における科学者のかかわりを振り返りました。大学での若手教員の比率が減り活躍の場が増えていない現状などを指摘し「若手自身が意見をいってきたのだろうか」と問いかけるとともに、昨年の事業仕分け後、神経科学者による提言などの動きが出ていると述べました。

 また全米ポスドク協会などがあるアメリカで、最近、カリフォルニア大学でポスドク組合が作られたことも紹介し、「当事者が声を出すことで、問題が見えてくる」「若手が声をあげることは世代間の対立ではない」と強調していました。

視点と活力を

 若手アカデミー委員会の活動検討分科会委員長でもある駒井章治・奈良先端科学技術大学准教授は、「検討段階の方向性ですが」としつつ、若手アカデミー設置の目的と意義について報告しました。

 現代社会が直面する問題の解決のために柔軟な若手の視点と新世代の活力を取り入れること、さらに若年層の理科離れや若手研究者をめぐる問題解決へ行動を起こすことが求められているとして、(1)ふかん的な視野を持つ人材の輩出、(2)国内外の若手研究者間の協力、(3)政策提言など意見集約・議論・発信、(4)社会との幅広い連携などの活動を担う考えを述べました。

組織つくって

 パネルディスカッションでは、昨年の事業仕分けの判定に対し26分野の若手研究者による共同声明を発表した自然科学系の研究者が、若手研究者が対外的な活動をする上でのさまざまな困難・複雑さ、研究者の多様性などを配慮した粘り強さがいると発言。人文系の研究者からは、ポスドクの後に行き場がないなどのポスドク問題を世代間格差に解消してはならないこと、「若手研究者や大学院生はプレーヤーであるだけでなく、プランナーとして制度に声をあげていくことが大事」だとのべ、その立場からチームで実践することを強調していました。

 「個人で声をあげるのはきびしいが、組織をつくって外に声をあげていくのは民主主義の基本だ」と会場からも活発に意見が出ていました。シンポジウム自体はごく短いものでしたが、若手研究者の新しい動きとして注目しました。(三木利博)





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