2010年12月7日(火)「しんぶん赤旗」

京都議定書延長反対の日本政府に批判

孤立の道 突き進む


 メキシコで開催中の気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)で、京都議定書延長反対を表明した日本は、厳しい批判にさらされています。世界に通用する国際的な道理の欠如という日本外交の欠陥が、ここでも露呈しています。


 「交渉の最初の段階では強い姿勢を示して利益を得て、最後に妥協するのが外交だ」―政府当局者からは、こんな声も聞こえます。しかし地球温暖化防止の交渉は貿易交渉とは違います。「世界全体の平均気温上昇が産業化以前と比べて2度を超えない」「先進国全体で2050年までに温室効果ガスを80%以上削減する」との国際合意をどう実現するか。全世界的コンセンサス(合意)をつくるために英知を尽くすべき課題です。政府の方針には、そこが見えてきません。

13年以降「無策」

 現在課題となっている2013年以降の温暖化対策の新たな国際協定に関して政府は、「すべての主要排出国の参加」が必要だと言います。温暖化問題は人類共通の課題です。「すべての主要排出国の参加」は当然です。問題は、それをどう実現するかです。

 日本政府は、“世界の排出量の3割しかカバーしない京都議定書の延長は認められず、「一つの法的文書の早期採択」を目指すべきだ”と主張します。

 しかし「一つの法的文書の早期採択」の現実的展望がない現状で、次善の策としての京都議定書延長も反対となれば、13年以降は無策でもよいということになります。この線でコンセンサスが成立する余地はありません。

「差異ある責任」

 「世界の排出量の各2割を占める米中両国が参加しない枠組みは不公平だ」との日本の立場は「正論」だと擁護する見方があります。そうでしょうか。

 米中両国を同列に置く議論は不正確です。

 米国は先進国として世界最大の排出国であり、京都議定書採択に加わりながら、その後離脱した国です。米国が入れば京都議定書は世界の排出量の5割近くをカバーします。米国の不参加を同議定書の欠陥のように言うのは筋が通りません。

 中国は排出総量で世界一となりましたが、1人当たりでは米国の4分の1です。工業化以後の歴史的排出量を考えれば、差はもっと広がります。

 今日の温暖化防止の国際交渉は、先進国と途上国の「共通だが差異ある責任」を大原則にしています。昨年末のCOP15での「コペンハーゲン合意」も、この原則を大前提とした上で、先進国と途上国に異なった取り組みをするよう求める内容です。

合意の積み重ね

 国際交渉は、これまでに到達した合意に基づき、そこから一歩ずつコンセンサスを積み重ねるしか、前進しません。当面は京都議定書延長で対策の空白をなくし、共通だが差異ある責任の原則に基づく新協定の合意に接近するしかありません。

 現在の日本政府の立場では、もしCOP16が決裂すれば、その責任の多くを日本が背負うことになりかねません。そんな国際的孤立が日本の利益にかなう道でしょうか。(坂口明)





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