2010年11月6日(土)「しんぶん赤旗」

主張

TPP参加

交渉や協議始めるべきでない


 日本農業に壊滅的な打撃を与える環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加問題が重大な局面を迎えています。農漁業者や市民が強い反対を表明するなか、民主党がまとめた方針は、交渉入りは明記せず、「情報収集のための協議を始める」としました。

 しかし、菅直人首相はTPP参加のための交渉に入ることを断念していません。1週間後に横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、議長としてTPPを推進するとともに、事前協議にも加わる意向です。

農業と地域経済に打撃

 TPP参加が日本農業に大打撃となり、政府・民主党が掲げる「食料自給率向上」の公約にも逆行することは、農水省の試算などで明白です。地場産業や地域経済にとっても大打撃です。それにもかかわらず、推進派は明治維新、敗戦に続く「第3の開国」などとして、自由化を当然視しています。

 菅首相は、農業改革で日本農業と貿易自由化が「両立」できるといいます。聞こえてくるのは、大規模経営への集約による国際競争力強化です。これは自民党政権も目指し、失敗した政策です。

 米価の下落で大規模経営でさえ経営が困難になっています。コメ輸入まで自由化して、経営は成り立ちません。農産物を輸出できるような経営体は、ごく一部に限られます。地域経済や環境も支えられるような、産業としての農業の姿ではありません。

 TPPは商品・サービス貿易や投資などを自由化する経済連携協定(EPA)の一つです。太平洋地域の9カ国が交渉に参加していますが、経済規模で突出した米国が主導することが確実です。

 民主党は昨年の総選挙で日米自由貿易協定(FTA)推進を掲げましたが、農業者の強い反発で、今夏の参院選では日米FTAを掲げられませんでした。TPPは、日米FTAをより大規模に“復活”させるものです。

 日本経団連など財界3団体の連名による声明は、TPPに参加しなければ雇用を維持できないかのようにいいます。大企業はこれまでにも生産拠点を海外に移し、国内では正規雇用を非正規に移してきました。法人税率を下げなければ日本の空洞化が進むとも脅しています。大企業は巨額の内部留保をため込んでいます。雇用の維持・拡大には、大企業に社会的責任を果たさせることが不可欠です。

問題抱える米国主導

 米国が主導する自由化は世界的にも大きな問題を抱えています。メキシコ、カナダと結んだ北米自由貿易協定(NAFTA)は、メキシコで主食のトウモロコシの生産基盤を破壊しています。中南米全域を対象に米国が推進した米州自由貿易圏(FTAA)構想は、米国の政治的・経済的覇権を強めるものとして反発が大きく、立ち消えになっています。

 対照的に、中南米では自主的な政権による、各国の主権を尊重した多面的な協力が広がっています。TPP参加を不可避とする見方は異常です。

 例外なき関税撤廃が原則のTPP協議にいったん足を踏み出せば、農産物市場の完全自由化が求められるのは必至です。「情報収集」などとごまかさず、TPP参加のための交渉に足を踏み出さないことが重要です。





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