2010年11月2日(火)「しんぶん赤旗」

ルセフ氏大統領に

初の女性 ルラ政権を継承

ブラジル


 【ブラジリア=菅原啓】南米ブラジルで10月31日、大統領選の決選投票が行われ、ルラ政権の政策継承を訴えた与党・労働党(PT)のジルマ・ルセフ前官房長官が当選しました。ルセフ氏は同国初の女性大統領となります。


写真

(写真)10月31日、ルセフ氏当選を喜び歓声を上げる支持者たち=ブラジリア(菅原啓撮影)

 国民は、米国追随や新自由主義の路線を転換し、貧困層支援など国民生活の向上を重視してきたルラ政権の改革の継続を選択しました。

 中央選管の最終集計によると、ルセフ氏は55%を獲得。野党・ブラジル社会民主党(PSDB)のジョゼ・セラ前サンパウロ州知事は44%でした。

 ルセフ氏は31日夜、首都ブラジリアで会見。女性大統領の選出が「当たり前のこととして繰り返されるようにしたい」「機会の平等こそが民主主義の基本原則だ」と強調しました。約2000万人の国民が依然として貧困に苦しんでいるとして、貧困の一掃を図る決意を表明しました。

 ブラジリア市内の広場では同日、ルセフ氏当選の報を受けて、市民が集まり、祝賀集会を開きました。


解説

貧困層支援の実績で支持

 10月31日に投開票されたブラジルの大統領選決選投票は、ルラ政権が進める社会改革の継続・発展を公約した与党・労働党(PT)のルセフ候補が大差で勝利する結果となりました。

 10月3日の第1回投票で2位につけた野党・ブラジル社会民主党(PSDB)のセラ候補は、貧困層支援などルラ政権の政策の積極面は引き継ぐと公約。一方で、ルセフ氏は経験不足だとして、閣僚や州知事など行政経験が豊富なセラ氏の方が「もっとうまくやれる」と訴えました。

 第1回投票直後の世論調査では、両氏の支持率の差が数ポイント台まで縮まりましたが、最終的にはルセフ氏が巻き返しました。

 ルセフ陣営の幹部によると、最後に力を入れたのは、ルラ政権8年間の実績をそれまでのカルドゾ政権(1995年〜2003年)の実績と比較して国民に示すことでした。カルドゾ氏はセラ氏と同じPSDBの所属です。

 カルドゾ政権下での雇用創出は約500万人だったのに対し、ルラ政権下では3倍の1500万人。貧困家庭の割合も、カルドゾ政権下では28%で変化がなかったのに対し、ルラ政権下では約15%に減りました。

 両候補のテレビ討論では、こうした具体的数字を挙げるルセフ氏にセラ氏が反論不能に陥る場面もありました。

 セラ陣営が最終盤に強調したのは、人工中絶の問題でした。国内のカトリック指導者やローマ法王までが、PTは「(中絶容認の)死の党」だと攻撃し、ルセフ氏へ投票をしないよう呼び掛けました。セラ候補は中絶反対を強調し、追い風にしようとしました。

 第1回投票で約20%を得票して注目された緑の党のダシルバ候補も、環境問題だけでなく、中絶絶対反対の主張を掲げて人気を集めたといわれます。

 ルセフ陣営は、カトリックの影響の強さを考慮し、中絶を直ちに合法化することはしないと言明。労働党のある女性幹部は「中絶問題も結局有権者の判断に大きな影響を与えなかった」と語ります。

 敗れたとはいえ、セラ氏の公約には、貧困家庭向けの家族手当の改善策など検討に値する主張も含まれます。ルセフ新政権が、有権者の一定の支持を集めた野党側の主張にどう耳を傾け、よりよい施策の具体化を図るか注目されます。(ブラジリア=菅原啓)





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp