2010年10月28日(木)「しんぶん赤旗」
“完全雇用は経済安定の道”
米財団 政策シンポで提言
ワシントン
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【ワシントン=西村央】米国で失業率が9・6%と高どまりし、やむなくパート・タイムの仕事に就く人が増えるなど雇用の不安定さが続いているもと、ワシントンで26日、完全雇用に向けた新たな道筋をさぐるシンポジウムが開かれ、200人余りが政策提言や質疑に熱心に耳を傾けました。
主催したのはワシントンに本部があるシンクタンクで、オバマ政権に近いニュー・アメリカ財団。同財団のシェール・シュウェニガー経済成長政策責任者は、1997年12月の景気後退後、840万の雇用が失われ、失業者にパートなどを加えた不完全雇用が2500万人に達していると指摘。
その上で、失業の増大は税収を低下させ、生活関連予算の削減につながり、社会保障やメディケア(高齢者医療制度)の長期的見通しを悪化させているとのべ、「完全雇用こそ経済安定と経済的機会をもっとも保証するものだ」と主張しました。
これまでの政権の政策が完全雇用を作り出していない理由として、労働市場には最小限の注意しか払わずに金融政策に過度に依存してきたこと、需要創出のための政策の不足、民間部門での雇用構造が“崩壊”していることなどをあげ、これらの改善の必要性を強調しました。
テキサス大学オースティン校のジェームズ・ガルブレイス教授は、銀行システムを再編成し、中小企業の事業を支える融資に力を入れて雇用増につなげていくことや、若い労働者の雇用機会を広げるための高等教育の充実などを提言しました。
オバマ政権のもとで、公共投資など財政出動による景気刺激策を推進していますが、本格的雇用増には転化していません。その後、民間企業での雇用拡大を誘導する中小企業支援などにとりくんでいますが、本格的雇用回復は依然大きな課題で、11月2日投票の中間選挙で今後の政策展開が争点となっています。
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