2010年10月27日(水)「しんぶん赤旗」

監視要員が一時不在

自衛艦あたご 漁船衝突前

公判で自衛官証言


 海上自衛隊のイージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」に衝突、沈没させて漁師親子が死亡した事件の第7回公判が26日、横浜地裁(秋山敬裁判長)で開かれました。衝突時に「あたご」の戦闘情報センター(CIC)でレーダー監視を担当していた3人の自衛官が証言に立ち、衝突前、CICの要員が一時不在だったことなどが分かりました。

 また、3氏からは「両舷停止」「自動操舵やめ」「汽笛」の伝令を聞くまで、清徳丸の航跡をレーダーで確認したとの証言はありませんでした。

 同裁判では、「あたご」の元水雷長の長岩友久被告(37)と元航海長の後潟桂太郎被告(39)が業務上過失致死罪、同往来危険罪に問われています。

 この日の公判で、レーダーを監視した計測員の一人は前任の当直者からの引き継ぎにはなかった目標を発見して当直仕官に報告しましたが、それらのなかにも「清徳丸はいなかったと思う」と具体的に証言しました。

 別の自衛官も、引き継ぎにはなかった目標を、引き継いだ目標よりも「あたご」により近い位置で確認、「なんでこんなところに目標船がいるのかと疑問を感じた」と証言しました。

 ある自衛官は「自分が席につくまでCICには誰もいなかったと聞いた」と証言。

 不在の理由は、交代前にCICに配置されていた要員が夜間訓練だったためでした。


解説

相手船に無関心

 公判での自衛官の証言は、「あたご」が漁船など相手船の動静にいかに無関心であったかを浮き彫りにしました。

 艦長はじめ当直仕官の操船を補佐する重要な位置にある戦闘情報センターの要員を一時的とはいえ「海の銀座」といわれる内外の大小の船舶が交差する房総沖で不在にしたのはその典型です。

 当日は海面反射で小型漁船などがレーダーに映りにくいという条件があったにせよ見張り要員やレーダー監視要員が基本どおりの任務配置につき、基本動作をしていれば漁船を正確に把握できたはずです。

 「あたご」が最後まで清徳丸を正確に把握できなかった事実は深刻です。自衛官は異口同音に証言しました。「『あたご』にとって支障がない目標は引き継がない」

 そこには、自衛艦優先の発想があります。(山本眞直)





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