2010年10月18日(月)「しんぶん赤旗」

主張

禁輸原則「見直し」

兵器産業のための危険な企て


 政府が年内に策定する新たな「防衛計画の大綱」に、武器輸出を原則禁止した「武器輸出三原則」の「見直し」を盛り込もうという動きが強まっています。

 北沢俊美防衛相は14日の参院予算委員会で、「三原則」見直しについて、「防衛相として新しいものをつくる提案をしている」と答弁しました。仙谷由人官房長官も「研究する必要がある」とのべています。武器禁輸原則を崩す策謀が、重大な段階を迎えていることを示しています。

国会決議に反した約束

 北沢防衛相は、国会答弁に先立つ11日のゲーツ米国防長官との会談で、「新安保防衛懇談会の報告書も参考にしながら、新しいものを作ればいいな」と進んで表明したことを明らかにしました。ことは重大です。禁輸原則見直しは、禁輸原則擁護の決議を何度もあげている国会はもちろん、政府部内でさえ了承された方針ではありません。北沢氏のように、米政府の事前了解をとりつけ、それをテコに進めるようなやり方が許されるはずがありません。

 米政府は小泉純一郎政権時代にミサイル防衛の日米共同開発・生産に限って「三原則」適用を例外扱いにさせています。「三原則」見直しを明言した北沢防衛相の表明は小泉政権よりふみこんだものです。ゲーツ長官が「大いに歓迎する」と喜んだのはそのためです。

 日本政府が海外への武器輸出を事実上全面禁止するようになった「武器輸出三原則」とは、もともとは佐藤栄作首相が1967年の国会で、「共産圏」諸国、国連決議で武器輸出が禁止されている国、国際紛争当事国などをあげて武器輸出を認めないと表明したのが始まりです。76年には三木武夫首相がこれらの国への禁輸を確認するとともに、それ以外の国々への輸出も慎むなどとする政府見解を示しました。憲法の平和原則にそったものとして国会も国民も歓迎してきました。

 北沢防衛相がその「三原則」の見直しに躍起なのは、財界・兵器産業の利益を代弁しているからです。日本経団連は7月にだした「新たな防衛計画の大綱に向けた提言」のなかで、戦闘機などの「国際共同研究開発」に参加するためということを正面におしだして、現在の「三原則」に代わる「新しい武器輸出管理原則を確立すべき」だと迫っています。日本の兵器産業が武器・装備の国際共同開発に参加し、「死の商人」としてさらにぼろもうけできるよう求めているのは明らかです。

 日本経団連の提言は、共同開発に続く共同生産段階では「共同生産国からの再輸出についても考慮しておく必要がある」といっています。日本が国際共同開発した戦闘機などの武器・装備が、共同開発国を通じて紛争当事国に輸出され、他国民を殺傷することにつながる恐れがあるのは明白です。

平和原則の国是を守れ

 日本がこれまで、日本の企業がつくった武器で他国民の命を奪うことがなかったのは、武器禁輸の原則を守ってきたからです。「三原則」は「平和主義に立脚した国是の一つ」(1981年12月、松田慶文外務省官房審議官=当時)です。

 禁輸原則は今後とも守られるべきです。武器禁輸原則の見直しを許し、日本を「死の商人」国家にすることは絶対に許されません。





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