2010年10月9日(土)「しんぶん赤旗」

主張

円高・デフレ緊急対策

経済のゆがみを正してこそ


 政府が「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を決定しました。菅直人首相が掲げる「3段構えの経済対策」の「第2段階」に当たります。

 9月に決定した予備費9千億円を使った「第1段階」の対策に続く今回の対策は、5兆円の補正予算で具体化します。対策は新成長戦略の推進、雇用や医療・介護、社会資本整備、中小企業対策、規制緩和を柱にしています。

無駄な大型公共事業も

 首相は所信表明演説で「第1段階」は円高・デフレへの緊急策であり、「第2段階」でデフレから脱却し景気回復を軌道に乗せると説明しています。来年度の予算・税制改正を「第3段階」として、「日本経済を本格的な成長軌道に乗せていきたい」とのべました。

 「第2段階」の対策では既卒者の新卒扱いや中小企業の資金繰り支援など、一定の緊急策も盛り込まれています。その一方で三大都市圏の環状道路や国際空港・港湾など、不要不急の大型公共事業も目立ちます。これでは円高やデフレ(物価の継続的な下落)の問題を解決することはできません。

 日本の輸出大企業は利益を急速に伸ばして世界経済危機から「V字回復」を果たしました。「非正規切り」や正社員の賃下げ・リストラ、下請け単価たたきでコストを引き下げ、輸出で売り上げを拡大して大もうけを上げています。大企業は、それを雇用・賃金や地域への投資として国民に還流させずに、配当を増やして株主に配ると同時に巨額のため込み金(内部留保)として滞留させています。

 労働者と中小企業にしわ寄せして大企業が富を独り占めにするゆがんだ構造こそ、日本を先進国の中で唯一、労働者の所得が減り続ける国にしてきた原因です。最近の大企業の行動は、このゆがみをいっそう激しくしています。

 大企業が労働者と中小企業に犠牲を転嫁して競争力を強めるやり方は国民から購買力を奪い、内需を冷え込ませてきました。その結果がデフレ状態です。大企業の競争力はこれまで以上に輸出に向かい、日本経済の円高体質をひどくしています。ここにメスを入れてこそ円高、デフレ問題の解決を図ることもできます。

 首相は日銀に、いっそうの政策対応を求めています。日銀は「実質ゼロ金利」の復活、株式市場や不動産市場へのてこ入れなど、なりふりかまわぬ資金供給に踏み込みました。問題は実体経済のゆがんだ構造であり、それを改めるのは政府の責任です。日銀に責任を転嫁しても何も解決しないばかりか、異常な資金供給は投機熱をあおり、ますます大資産家に富を集中させて経済のゆがみをひどくするだけです。

犠牲転嫁をやめさせて

 「第3段階」の内容として首相が所信表明演説で言及した唯一の具体策は法人税減税です。「空前のカネあまり」状態にある大企業に減税しても、ため込み金を増やすだけで内需の立て直しには役立ちません。減税財源として消費税を増税するなら、内需に壊滅的な打撃を与えます。

 労働者派遣法の抜本改正や中小企業と大企業との公正な取引ルールの確立など、労働者と中小企業への犠牲の転嫁をやめさせることによって大企業の利益とため込み金を国民に還流させ、日本経済のゆがみを正す改革が必要です。





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