2010年9月28日(火)「しんぶん赤旗」

来月18日から COP10名古屋会議

多様な生物 保全へ議論

新たな目標・議定書 課題に


 地球上に誕生した3000万種ともいわれる多様な生き物。その命のつながりと生息環境を守り、後世に残すための仕組みを考えようと、国連の会議「生物多様性条約締約国会議」(COP10)が、10月18日から名古屋市で始まります。各国政府をはじめ国際環境保護・研究機関、環境市民団体などの代表ら約8000人が集まります。2年に1度開催されるこの国際会議はどんな会議なのか―。(宇野龍彦)


 生物多様性条約(1993年発効)は92年に開かれた「地球サミット」(国連環境開発会議)を機に生まれました。地球温暖化防止の気候変動枠組条約と双子の関係にある国際条約です。条約の目的に、(1)生物多様性(別項)の保全(2)生物資源の持続可能な利用(3)「遺伝資源」(生物の遺伝子情報)の利用から得られる利益の公正・公平な配分―の三つを掲げています。この条約には、193の国・地域が参加(8月現在)。アメリカは加盟していません。

 なぜ生物多様性条約が生まれたのか―。その理由は、地球の生き物の危機が人類の生存を脅かすほどの猛烈なスピードで進行し、その影響が社会や経済、貧困問題にまで発展しているという事態に直面したからです。

 IUCN(国際自然保護連合)がまとめた2009年版「レッドリスト」は、絶滅のおそれの高い8782種の動物と8509種の植物をリストアップし、「生物多様性」の危機に警鐘を鳴らしました。

8年前採択の目標は未達成

 2002年にオランダ・ハーグで開催された生物多様性条約第6回締約国会議(COP6)では、条約の目的達成のために、「締約国は10年までに、地球、地域、国レベルで、貧困緩和と地球上すべての生物の便益のために、生物多様性の現在の損失速度を顕著に減少させる」という10年目標が採択されました。

 「ところが『生物多様性2010年目標』は未達成です。そのうえ、生物多様性の危機的状況や劣化をひきおこすさまざまな悪影響は、増加の一途をたどっています」。こう話すのは、COP10にむけ「NGO提言」をまとめた生物多様性条約市民ネットワーク共同代表の高山進・三重大学生物資源学部教授です。

 高山教授は「条約の三つの目的でもある(1)生物多様性の保全(2)生物資源の持続可能な利用(3)「南北」の格差是正(「遺伝資源」の利用から生じる利益の公正・公平な配分)―を一体のものとしてとらえる視点が重要で、COP10後の10年の取り組みが、私たちや私たちの次の世代の生存のカギとなっています。生物多様性の損失速度を顕著に減少させることができなかったという、これまでの社会運営のあり方を根本的に変革することが大切で、COP10はそのきっかけを切り開く『チャンス』だと思います」と、会議の行方に注目します。

役割問われる議長国の日本

 COP10では、生息環境を脅かすことを食い止めるための法的拘束力ある20年までの目標や50年までの戦略目標が課題となります。具体的な対策をもりこむ新しい議定書「名古屋議定書」なども議論する予定です。

 しかしアメリカが生物多様性条約に不参加のもとで、最新の医薬品などの原料になる生物遺伝資源を持つ途上国の貧困問題と、資源を利用して巨額の利益をあげる先進国の大企業による環境破壊の問題などを抱えています。それだけに、議長国の日本の役割も問われる国際会議となります。

 世界から結集した環境市民団体が、実効ある国際合意を求め、環境NGO宣言をCOP10でアピールし、世界の生物や環境保護のとりくみや環境破壊の実態を世界に訴え、交流する場にもなります。


生物多様性とは

日本 3155種が絶滅のおそれ

 環境省がまとめたパンフレットによると、「生物多様性」には三つの側面があります。

 一つは森林、里山、水田、干潟、サンゴ礁など「生態系」の多様さ、二つは動植物の「種」の多様さ、三つは過去から未来へと生き物が伝える「遺伝子の多様性」です。そのいずれもが、開発で脅かされています。

 しかも地球規模の破壊速度は化石記録からの推定値の1000倍のスピードで、年間4万種類の生き物が絶滅しているといいます。

 生物多様性が豊かとされる日本ですが、2007年に公表された環境省版レッドリストには3155種が絶滅の恐れがあるとされています。

 日本の「種の保存法」では、レッドデータブック記載種のうち、国内の希野生動植物種に指定されているのは82種だけ。生息地等保護区の指定はわずか7種にとどまり、生物多様性保全は大きく立ち遅れています。米軍基地建設による環境破壊、諫早湾干拓事業、大規模ダムなどの公共事業や森林・山村の荒廃が拍車をかけているのが実情です。

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