2010年9月1日(水)「しんぶん赤旗」
民主 「挙党態勢」折り合わず
国民不在の密室談合の末、代表選へ
民主党の代表選(1日告示、14日投票)は、「密室談合」を繰り返して右往左往したあげく、小沢一郎前幹事長の出馬表明で、菅直人首相との争いとなりました。
3カ月前に引責辞任したばかりの鳩山由紀夫前首相が「仲介者」となった密室談合は、国民生活や政策をないがしろにした権力闘争そのものでした。自民党時代となんら変わらない姿でした。
権力闘争に血道
菅氏に代表選出馬表明という挑戦状を突きつけた小沢氏の“大義名分”は、「挙党態勢」の構築。菅首相は小沢氏本人からは「人事の要求はなかった」といいますが、小沢氏があえて「挙党態勢」を迫った本意は、自らの権力掌握のために菅首相に「脱小沢」路線なるものをやめさせることにあったことは広く指摘されています。円高不況などにあえぐ国民の苦しみなどそっちのけで、権力闘争に血道をあげたのです。
そこには、小沢陣営のイラ立ちも表れています。8月30日に都内で開かれた埼玉県選出の同党衆院議員の政治資金パーティーには小沢支持派の議員らが結集。同じ埼玉県選出にもかかわらず、「脱小沢」の象徴とされる枝野幸男幹事長を招かなかったことを、ことさら紹介したのが象徴的でした。
小沢氏は、「政治とカネ」問題をめぐって多くの国民が拒絶感を示していることなどお構いなしの立場です。「毎日」30日付世論調査結果でも、小沢氏の影響力が民主党内に広がることを「好ましくない」とする回答が83%に達しています。
一方、迎え撃つ菅首相にも、なにか「大義」があるわけではありません。菅氏は、鳩山・小沢体制のもとで副総理兼財務相として後期高齢者医療制度の廃止の先延ばしや米軍普天間基地の「県外・国外移設」撤回など数々の公約違反を支持してきました。
先の参院選では「政治とカネとか、普天間のことで少しご心配をおかけしたが、それもクリアをした」と発言してはばからないなど、小沢氏を擁護してきたのです。
世論の批判恐れ
その菅、小沢両氏は、代表選告示前夜の31日、夕刻ぎりぎりまで鳩山前首相を介しての密室交渉を繰り返しました。今日の事態は、世論の批判を恐れて「脱小沢」のポーズを崩さなかった菅氏と、あくまでも「挙党態勢」構築を求める小沢氏とのあいだの折り合いがつかず、交渉が決裂した結果に過ぎません。国民生活をどうするという議論がなされた形跡はまったくありません。
今回の民主党代表選をめぐる密室談合劇は、昨年夏の総選挙で政権交代が決まってからわずか1年後の結果です。「国民の生活が第一」「脱小沢」どころか、“国民そっちのけ”の民主党の実態は、ついにここまできたのかという実感をもたずにはおれません。(林信誠)