2010年8月25日(水)「しんぶん赤旗」

ドル安・円高

業者・雇用 しわ寄せ懸念


 内外の景気減速懸念を受けて、ドル安・円高の流れが続いています。

 ドル安の背景には、アメリカ経済の低迷があります。雇用者数が減少し失業率は高止まりしています。住宅価格は低迷し所得が伸び悩み、消費動向は弱い動きが続いています。景気回復どころか、足元や先行きにも不透明感が強まっているのが実態です。アメリカ政府は、このドル安を容認することで、輸出を増やし、国内の雇用を拡大するシナリオを描いています。

 一方で日本政府は、ドル安容認のアメリカに気兼ねして何ら有効な対策をとらずにいます。23日に菅直人首相と日銀の白川方明総裁が電話会談を行いましたが、具体策は示されませんでした。

 日本政府の無策ぶりにつけ込んでいるのが投機マネーです。アメリカ、欧州に代わって相対的に安全と見られる円が投機マネーのターゲットになって買われ、円高が進むという構図になっています。

 急激なドル安・円高は、日本経済に悪影響を及ぼします。

 日本の大企業は先物取引などで為替レートの変動分をカバーしています。輸入・輸出を同時に行う大企業にはマイナスもあれば、プラスもあります。2009年11月の円高急伸時には、大企業は稼働率を引き上げ、コスト削減を徹底することで収益を確保してきた経緯もあります。

 心配されるのは、大企業が円高を口実に中小企業、労働者にしわ寄せすることです。

 下請け単価の引き下げや賃金、雇用への影響が考えられます。製造業が海外生産を加速させ国内の空洞化が進むことも懸念されます。

 「価格競争で敗れ受注できない状態が続いている」(東海地方の一般機械器具製造業)

 「急激な円高による採算性の悪化が続く」(四国の電気機械器具製造業)

 すでに7月の内閣府の景気ウオッチャー調査に紹介された声にも、中小製造業を中心に円高の影響が出ています。

 こうした状況を打開するためには、投機マネーの規制とともに実体経済を内需主導に抜本的に転換していくことが求められます。(矢守一英)





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