2010年8月22日(日)「しんぶん赤旗」

東京 築地市場予定地の汚染

都民・専門家ら訴え 公開で再検証せよ

データ隠し「安全宣言」


 「これで安全宣言なんておかしい」。東京都民のみならず全国の食生活を支える築地市場(中央区)を、土壌汚染された東京ガス工場跡地(江東区豊洲)に移転させることに、都の「技術会議」が2日に出した報告書で“お墨つき”を与えたことに批判が上がっています。24日にはこの問題で都議会の委員会の連合審査会が開かれ、質疑が行われます。(東京都・川井亮)


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 実験結果の信頼性を揺るがすデータ隠しが発覚したにもかかわらず、「浄化可能」との結論で押し切った同会議。

「シャンシャン」

 「シャンシャン報告書ではとても納得できない。もう一度議論し直してほしい」。都への提言をまとめた技術会議を傍聴した築地市場の仲卸業者の男性(41)が怒りの声を上げました。男性は原島文雄座長(首都大学東京学長)ら委員に向かって、「議論すべきことがいっぱいある。これで“安全宣言”か。全国の消費者に安全なんて言えない」と訴えました。

 提言は、発がん性物質のベンゼンや猛毒のシアン化合物などで汚染されている土壌は、微生物、加熱、洗浄などの手段で浄化できると結論付けました。会議は2時間の予定だったのに、座長のほかは1人しか発言せず、わずか30分余で終了しました。

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(写真)都職員の案内で地下水浄化の実験設備を調査する党都議団=4月22日、東京都江東区

 「市場を考える会」の山崎治雄代表は「通り一遍の報告だ。こういうことが行政で行われてよいのか」と憤ります。日本環境学会の畑明郎前会長も「意図的なデータの一部利用。ベンゼンを処理したという微生物の鑑定もない。都合のよい結果が出るものだけを取り上げた恣意(しい)的な実験だ」と批判します。

詳細は「墨塗り」

 会議直前の7月半ば、“汚染を無害化できると実証できた”とした処理実験の「中間報告」(3月)を覆す事実が分かりました。

 「中間報告」では環境基準の4万3000倍のベンゼンで汚染された土壌が実験で「環境基準以下になったことが確認」されたと発表しましたが、実際には、実験に使った土壌試料の実験前のベンゼン汚染濃度(初期値)は環境基準の2・7倍しかなく、ヒ素の初期値は基準値以下でした。実験そのものの信頼性が問われるデータでしたが、都は隠し続けました。

 当時、実験に疑問を唱えた日本共産党都議団の公文書の開示請求に対して、都は初期値や実験方法の詳細などを「墨塗り」した文書しか出しませんでした。坂巻幸雄・日本環境学会土壌汚染問題グループ長は、「科学の世界ではあってはならない」ときびしく批判していました。

 都のデータ隠しには、実験結果を追認した技術会議の原島座長も「結果的に混乱する説明はまずかった」(7月22日の記者会見)と言わざるを得ませんでした。

不適格な場所に

 東京ガス工場があった豊洲予定地は1956年から88年まで32年間にわたって、石炭から都市ガスを製造しており、ベンゼンやシアン化合物、ヒ素、水銀、六価クロムなどの有害物質が見つかっています。魚をはじめ生鮮食料品を扱い、食の安全の確保が最も必要な市場を移転させるには全く不適格な場所でした。

 ところが、石原慎太郎知事は99年の就任後、それまで現在地・築地での再整備工事を進めていた計画をひっくり返し、「豊洲移転」を打ち出したのです。

現地で再整備を

 日本共産党は、高濃度の有害物質で汚染された豊洲への築地市場移転を一貫して批判し、現在地での再整備を求めてきました。

 吉田信夫幹事長は3月都議会で、都が初期値を隠して実験の「成果」を誇っていることをいち早く追及。科学誌『ネイチャー』電子版4月26日付も吉田氏の質問と党都議団が開示請求した墨塗り文書を紹介しました。

 党都議団は、技術会議の提言が「専門家や都民の疑問にまともに答えることなく、一方的に有効性確認の結論を出した」と批判し、専門家や市場関係者と技術会議委員と公開討論を行い、土壌処理策も根本的に再検証するよう、都に申し入れています。





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