2010年8月16日(月)「しんぶん赤旗」

主張

日本の軍事費

本格的削減の知恵だすときだ


 8月末にかけ本格化する来年度予算の概算要求づくりで焦点の一つが軍事費です。

 日本の軍事費は年間5兆円規模を続けています。財政危機で国民が苦しんでいるのに巨額の軍事費を支出し続けるのは道理にあいません。財政悪化に苦しむ欧州では軍事費の大幅削減にふみだそうとしています。日本も本格的な削減に向け知恵をだすときです。

日本だけが「聖域」扱い

 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は6月公表の2010年版年鑑のなかで、失業者や財政赤字が拡大している一方で軍事費が伸びているのは一種の「パラドックス(逆説)」であり、人々の怒りを招く可能性があると指摘しました。

 欧州ではすでに、英国が2014年までに25%、フランスは今年度15%、イタリアは10%などの削減計画を示しています。ドイツは今後5年間で日本円にして1兆円以上の削減を検討しています。世界の軍事費の43%を占める米国でも軍事費削減そのものには慎重とはいえ、財政事情が深刻なため今後5年間で1000億ドル(約8兆6000億円)の「節約」を行う方針をうちだしました。どの国も財政悪化に対処するために軍事費を「聖域」にせず、削減にふみだしているのです。

 ところが日本だけは、財政再建が必要だといいながら軍事費を「聖域」とし、本格的な削減にとりくもうともしません。昨年民主党政権に代わっても軍事費を「聖域」にするのは変わりません。

 10年度の軍事費は昨年よりも162億円も多い4兆7903億円です。国民生活予算を犠牲にしながら軍事費の削減に背を向け、巨額の税金を投入しつづけるのは異常というほかありません。

 しかも見過ごせないのはその中身です。自衛隊の海外作戦能力をさらに強め、一方で米軍経費の日本負担を増やしています。たとえば、1181億円を投じて建造する14機のヘリを搭載する2万トンもの大型ヘリ空母です。すでに保持している大型輸送艦などの海外派兵型装備とあわせて、日本が米軍とともに海外で戦争する軍事態勢をさらに強めるものです。

 米軍経費の日本側負担も重大です。米軍地位協定上も負担義務がない米軍「思いやり予算」、SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費、米軍再編経費の合計は3369億円にのぼります。在日米軍の任務は「日本防衛」でなく世界各地への軍事介入です。日本の米軍経費負担が米軍基地の日本いすわりを許し、米軍の戦争を後押ししているのは明白です。

軍縮の先頭に立つために

 軍事費の削減は、財政の立て直しに不可欠なだけでなく、戦争放棄と戦力不保持を明記した憲法9条に照らしても重要です。

 政府は巨額の軍事費を正当化するために中国や北朝鮮の軍事動向をもちだします。しかしこうした「軍事には軍事で対抗する」という立場では、軍事費増額競争につながるのは避けられません。日本が巨額の軍事費を維持したままで諸国の軍事費をあれこれいっても説得力はありません。軍事対抗の立場からの脱却が不可欠です。

 憲法9条をもつ国として日本が軍事費大幅削減に知恵をしぼり、東アジアの軍縮の先頭に立つことこそ求められます。





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp