2010年8月14日(土)「しんぶん赤旗」

郵政10万人正社員に

職場に組合 頼れる仲間

非正規社員と運動広げる 郵産労神戸中央支部


 全国で約21万人と日本で最も多くの非正規雇用労働者を働かせている郵政グループで、全労連加盟の郵政産業労働組合(郵産労)は非正規社員に心を寄せ、正社員化の運動を前進させています。郵産労神戸中央支部は、正規と非正規、労働組合の違いをこえて取り組みを広げています。(田代正則)


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(写真)全国キャラバンで宣伝する郵産労神戸中央支部の組合員たち=6月、和歌山県海南市

 郵政民営化がすすむなか、会社は利潤追求を第一に「JPS(ジャパン・ポスト・システム)」と呼ばれる労務管理を導入。労働者に秒単位の作業を強いるトヨタの「カンバン方式」を取り入れ、正規職員を削減し、非正規社員に置き換えていきました。

 非正規社員のうち、3年以上契約更新を繰り返し、正社員同然の社員は12万人以上。非正規社員のほとんどは、月10万円以下のワーキングプアです。郵産労は、10年前から非正規社員に組合への加入を呼びかけ、待遇改善と正社員登用を求めてきました。

署名を力に

 神戸中央支部では、「ワーキングプア労働に支えられた企業が、まっとうな企業と言えるのか」と、組合員みんなが自分の問題として取り組もうと議論を重ねました。

 交代勤務のなかで、集まるのが大変な組合員たちには、明け方や夜中に集まってもらい、正社員化と署名を集める意義を話し合うなど努力してきました。

 今年の正社員化を求める署名は、目標の3千人分を大きく超える5千人分が集まりました。

 ある非正規社員の組合員は、自分の住む地域の自治会で署名を訴えました。別の女性組合員は、常にかばんに署名用紙とペンを入れて集めました。

 街頭でも、横断幕や着ぐるみを出してにぎやかに宣伝を繰り返しました。

 週5回発行の支部ニュースを職場に広げ、連合加盟労組に所属している労働者にも署名を呼びかけ、協力者を増やしていきました。60歳以上の再雇用となった労働者は、行きつけの飲み屋で集めてくれました。

政治動かす

 今年3月、日本共産党の大門実紀史参院議員の国会質問で、亀井静香郵政担当相(当時)が10万人を正社員化すると約束しました。世論と郵産労の運動が政治を動かしました。

 正社員登用に応募し、採用試験に向けた筆記テストの勉強をした非正規社員からは、「何年も正社員同様に勤めているのだから、希望者は全員正社員にしてほしい」「所属長『評価』や面接などで恣意(しい)的判断をせず、公正な試験にしてほしい」と声が出ています。

 郵産労では正社員化を確実に実行させようと、団体交渉し、対象者の枠を広げることや今後も継続的に正社員登用を行うことを会社に約束させました。

 郵産労の支部がない職場のなかには、正社員化の募集が知らされないところもありました。正社員化の職場周知を広げようと、全国キャラバン宣伝を行い、組合員のいなかった熊本、和歌山などで加入者が相次ぎました。神戸中央支部も、和歌山県で宣伝を行いました。

親身に相談

 「郵産労があるから、郵便局は安心できる」。こう語るのは、6月から神戸中央郵便局に勤務する非正規社員の男性(23)です。

 男性は04年に、夜間高校に通いながら郵便局でアルバイトし郵産労に加盟していました。高校卒業後は退職し、ためたお金で演劇の専門学校に通いました。

 しかし、父親が倒れ、母親が二つの仕事をかけもち、4人の子どもを育てることになりました。

 男性は長男で、運送会社に就職し家計を支えましたが、通勤中の交通事故で退職。次は、製粉会社の倉庫清掃の仕事に就き、小麦粉が原因でアトピーになり、仕事を続けられなくなりました。

 「事故や病気でも、社会保険がなかったし、労災もおりなかった。労働者同士のあいさつもない職場だった」と、症状が残る腕をさすります。

 頼れる仲間がいる郵便局で、再び働くことにしました。「郵産労の先輩は、親身に相談に乗ってくれる。職場に組合がある大切さを実感します」

 働き始めたばかりの男性は、まだ正社員化の応募資格がありません。週4日勤務で収入は7万円弱。時給にして770円の低賃金です。

 「せめて月10万円はほしい。やっぱり正社員として安心して仕事につきたい。仲間のいるこの職場で頑張っていきたい」と語りました。

 「非正規雇用労働者は、苦労している人が多く、話を聞かせてもらうと視野が広がる」と成山太志神戸中央支部支部長はいいます。

 「日本一の非正規社員を抱える郵政の職場で10万人正社員化を実現し、日本で『雇用は正社員が当たり前』の社会をつくる突破口にしたい」と強調しました。





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