2010年7月31日(土)「しんぶん赤旗」

反省なき菅首相

期限切り比例削減狙う

消費税増税反対締め出す


 参院選で下された国民の審判に無反省な上に、民主主義破壊を公然と口にする――臨時国会召集にあたって菅直人首相が30日に行った記者会見の中身は、菅政権がいかに国民世論と乖離(かいり)しているかを象徴するものでした。

 菅首相は、29日の民主党両院議員総会で党所属国会議員から、「消費税10%発言」が参院選大敗をもたらしたとして厳しい批判にさらされたばかりです。

 記者会見で菅首相は「私の唐突と受け止められた消費税発言が大きく影響した」と“反省”を口にはしたものの、「財政再建の課題はどなたが総理大臣になろうと、どの党が政権を担当しようと避けて通れない。これからも財政再建に取り組んでいきたい」と述べ、引き続き消費税増税論議を進める立場を打ち出しました。

 重大なのは、消費税増税の環境づくりを狙って「国会議員自ら身を切ることも必要だ」との口実で、参院選マニフェスト(政権公約)で掲げた「衆院比例定数80削減、参院定数40削減」の具体的なスケジュールを明言したことです。菅首相は、枝野幸男幹事長と輿石東参院議員会長に対し、「8月中に党内の意見をまとめてほしい。12月までには与野党で合意をはかってもらいたい」と指示しました。

 衆院の選挙制度のなかで、比例代表は民意を反映する唯一の民主的な部分です。この削減は民意の削減になり、民主主義の破壊そのものです。

 2009年総選挙結果で試算すると、比例定数80削減が強行されれば、民主党が42%の得票で衆院議席の68%、3分の2以上の議席を得ることになり、参院で法案が否決されても民主党単独で再議決を強行できることになります。消費税増税や米軍基地押し付けなど民主党政権が進めようとしている重大問題が問答無用で通ることになりかねません。

 とりわけ、「12月までには与野党で合意」と年内に期限を区切って比例80削減の方向を打ち出したことは重大です。「財政再建」を口実に消費税増税法案も成立させて、次の総選挙では「事後承認」を得るだけという算段。それまでに、消費税増税反対勢力を国会から締め出そうというのが比例定数削減の狙いなのです。

 国民は新たな政治を求めています。その流れに逆らい、封じ込めようとする菅政権の暴走は許されません。(高柳幸雄)





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