2010年7月26日(月)「しんぶん赤旗」

軍事費・大企業減税そのまま

民主の概算要求基準「提言」

家計重視 影ひそめる


 民主党は22日に「平成23年度予算概算要求組み替え基準に関する民主党提言」を発表し、政府に示しました。「提言」は2011年度の概算要求基準について、国債費の償還を除く歳出の大枠を今年度並の71兆円とする一方、「マニフェストの実施」「デフレ脱却・経済成長に特に資する事業等」などのためとして、2兆円程度を目標とする「元気な日本を復活させる特別枠」の創設を求めました。

 参院選挙で菅直人首相は財界要求と軌を一にした「強い経済・財政・社会保障」を掲げ、「消費税10%への増税」を公約。その結果、国民の怒りを買い民主党は大敗しました。選挙総括に向けた地方組織からのヒアリングで首相の消費税増税発言への批判が続出するなど、党執行部の求心力は低下の一途です。来年春のいっせい地方選も控え、11年度予算に対して党内の各方面から歳出圧力も強まっています。

「苦肉の策」

 その中で、いわば「苦肉の策」として出されたのが今回の「提言」。歳出の大枠(71兆円)の範囲内で「特別枠」を設け、“景気対策”に用いるというアイデアですが、矛盾が噴出しています。

 一つの根本的な矛盾は、軍事費や大企業減税などの聖域をそのままにして、国民生活を重視した現実的な予算編成はできないという問題です。

 無駄を削減していけば、それだけで17兆円もの財源を生み出せるとしてきた同党の「財源論」(鳩山マニフェスト)の破たんは明白ですが、菅政権のもとで「復活」した党の政策調査会では、財源論の欠陥を検証する論議さえ始まっていません。

対立厳しく

 財政再建を重視する同党議員は「今後、党内対立は激しくなる」としつつ、「党内の政策論議は予算編成を進めながらやるしかない。出ないものは出ない」といいます。

 財政再建を「大義」にした消費増税計画がくすぶる一方で、大規模な大企業減税を進めようというのは、財政再建にも矛盾します。

 同議員は「(法人税の)課税ベースの拡大を進める」としたうえでこう述べます。「本音を言えば、巨額の内部留保をもっている大企業に減税してやる必要はない。法人税も増税しなければならないはずだ」

何が有効?

 もう一つは、「マニフェストの実現」を2兆円の特別枠の使途の一つとしていますが、現在有効なマニフェストは何なのかが不明確という深い混迷があることです。しかも何を削減して財源を捻出(ねんしゅつ)するかも、規模も明確になってはいません。

 ある民主党議員は、「鳩山マニフェストの基本コンセプトは家計の応援であり、『可処分所得』を増やすことだった。それが菅マニフェストでは影を潜め、かわりに日本経団連ばりの成長戦略が入った」と述べます。今回の「提言」でも「経済成長」を重視する文言が挿入されています。

 家計と大企業の競争力―。どちらを重視するかで、政策の優先順位に違いが出るのは当然です。参院選中にはNHKの解説委員からも「民主党政権は家計重視から企業重視へかじを切ったのか」と疑問を呈されています。菅内閣が、これらの問題でどのような姿勢を示すかが鋭く問われています。(中祖寅一)





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