2010年7月17日(土)「しんぶん赤旗」
豪雨 爪跡深く
日本列島に停滞した梅雨前線。大雨の被害は各地に広がり、河川のはんらんや土砂災害の生々しい爪(つめ)跡を残しました。14日以降16日までに死者・行方不明者13人を出し、家屋浸水、農作物被害など、くらしを直撃しました。
岩が家直撃 母子死亡
松江市
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16日午前2時ごろ、島根県松江市鹿島町恵曇の民家裏山で土砂崩れが発生し、直径4メートルの岩二つが草本留美子さん(37)宅を直撃しました。留美子さんと子ども2人が下敷きになりましたが、小学校6年の長女美月さん(11)は3時間後に救出されました。
島根県警と消防が、留美子さんと小学2年の長男竜我くん(7)の救助にあたり、昼前に救出しましたが搬送先の病院で死亡が確認されました。同日、地元小学校は終業式の日でした。
県警によると、草本さん宅は5人家族。留美子さんの母純子さん(66)と、純子さんの義母栄子さん(90)は自宅にいましたが無事でした。留美子さんら3人は1階北西の部屋で寝ていました。純子さんは1階の別の部屋、栄子さんは2階にいました。
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裏山は赤茶色の土がむき出しで、コンクリート擁壁の上には大きな岩が残ったままでした。親せきや知人らが見守る中、大型クレーン車で岩を移動させようとしましたが持ち上がらず、砕いての救助作業になりました。
ニュースを聞き駆け付けたという親せきの女性(70)は「2人とも助かってほしい」と心配そうに作業を見守りました。
気象庁によると、鹿島町付近は10日夜〜16日未明まで計211ミリの雨が降りました。(桑原保夫)
ドォーン 大量の泥水
岐阜・八百津町 可児市
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岐阜県中濃、東濃地域は15日夕から夜にかけての豪雨により、各地で大きな被害が出ています。
八百津(やおつ)町では土砂崩れで住宅が倒壊し、16日夕までに行方不明1人、2人が遺体で発見されました。夕方になっても住民や消防団、自衛隊による懸命の復旧作業が続いています。
家の前で家族とともに土砂の片付けをしていた男性(36)は、「昨夜10時ごろ、近所の家が倒壊したと聞いたので、すぐ家族と避難所に行きました。避難する時は道路がまるで川のようになっていて、あんな光景は初めてでした。今日もまた雨が降ってきたので、家の裏の山が崩れないか心配です」と語りました。
大量の泥水が流れこみ浸水した、煎(せん)餅(べい)の製造工場では、「昨夜、連絡を受けて、雨がやんでから工場に来た」という女性(61)が「山の上の泥水と側溝からあふれだした泥水で、20センチくらい沈んでいました。機材が泥につかり動きません。従業員10人がかりで朝から泥のかきだしをしていますが、いつ仕事を再開できるか分かりません」と語りました。
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可児(かに)市では、可児川のはんらんで、付近に駐車していた大型トラックや乗用車など二十数台が流され、名鉄広見線高架下の市道をふさぎました。あふれた川の水で自家用車が流されるなど、3人が行方不明になっています。
トラックの撤去作業を見ていた近くに住む女性(52)は「夜6時ごろから強く降り始めて、一時は停電もしました。窓が雨でバンバンと激しく鳴り、まるでなにか飛んできた物が窓にぶつかり続けているようでした。人生初めての大雨で台風より怖かった。2階の娘たちの部屋で夫も含めて家族一緒に寝たけど、恐ろしくて一睡もできませんでした」と語りました。
土田栄町の自治会は16日朝からおにぎりの炊き出しをおこないました。女性(70)は「夜8時ごろ、ドォーンとものすごい音がしました。朝になってから外にでたら、トラックが横倒しになっていました。ここに住んで50年になりますが、こんなに降ったことはなかった」と話しました。(高橋拓丸)
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