2010年7月7日(水)「しんぶん赤旗」

「公務員削減」どうみる

高級官僚の特権にメス 国民サービス 体制拡充を

最大の問題は財界との癒着


 参院選で日本共産党以外の各党が、「脱官僚」や「公務員削減」を競い合っています。「人件費2割削減」(民主、自民)「10万人削減」(みんなの党)といいますが、公務員削減問題をどうみればいいのでしょうか。


 公務員は「全体の奉仕者」(国家公務員法)です。しかし、一部の特権官僚が国民への奉仕ではなく一部の政治家や財界・企業の奉仕者となっています。この政官業癒着の接着剤が、企業を渡り歩いて巨額の報酬や退職金を得る「天下り」や、政治家への「企業・団体献金」です。

 天下り官僚は、許認可や公共事業などの仲介や情報提供を行い、利益を得た企業が天下り官僚を優遇。同時に政治家には政治献金を行い、企業寄りの政策をすすめてもらう関係になっています。官僚特権の最たるものである天下りを根絶しなければなりません。

 ところが、民主党政権の国家公務員法改定案は、天下りを禁止せず、あっせんだけをやめるものでした。それどころか菅内閣は6月22日、独立行政法人や公益法人への休職出向を拡大し、役員として出向する場合は公募対象からも外すことを閣議決定。出向の名で天下りを温存する姿勢を打ち出しました。

 自民、みんなの党はともに「天下り」や大企業との癒着を広げてきた党です。みんなの党の渡辺喜美代表が行革相だった自公政権時代の2007年、「官民人材交流センター」を設置。各省が行う天下り先あっせんを政府が一括して行うもので、「政府公認の天下りバンク」と批判されました。

■「天上がり」

 民主党は「官僚主導政治」と批判しますが、企業との癒着を断ち切るどころか、企業から省庁へ就職・出向する「天上がり」や「官民人材交流」でいっそう深まっているのが実態です。企業から官庁に2325人(2009年8月)も勤務しており、企業活動に直接かかわる部署に配属されていることは大問題です。

 金融庁検査局には、三菱東京UFJ6人、三井住友5人、みずほ2人など、30人中21人が銀行・証券出身者。“お手盛り”検査と批判されても仕方ない実態です。菅内閣は「官民の人事交流を拡充する」(退職管理基本方針)としており、いっそう広げる計画です。

■主要国で最小

グラフ

 日本の公務員は多すぎるのでしょうか。公安警察など削減すべき部門もあるものの全体としてみれば、数(人口比)でも人件費(GDP=国内総生産比)でも主要国で最小です。(グラフ)

 政府は、すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障する責任があります(憲法25条)。そのため「全体の奉仕者」として行政サービスを担うのが公務員です。この公務員が少ないほどいいというのは国の責務を投げ捨てるものです。

 公務員削減を叫ぶのは、消費税大増税を押し付けるためです。「まず公務員や議員削減」(菅首相)「増税の前にやることがある」(渡辺・みんな代表)といっており、公共サービスを切り捨てた上、大増税を押し付けようというのです。

 自民党政権下で公務員が削減され続けた結果、国民生活を守る上で人員が足りない分野は少なくありません。

 例えば教育分野。日本の教職員は生徒1000人あたり85・3人。小中学校だけでも、EU水準(125人)にするには36万人の増員が必要です。保育や防災、労働などの分野でも大きく不足しています。(別項参照)

 公務員削減の一方、「官製ワーキングプア」と呼ばれる臨時・非常勤職員が急増。国・地方あわせて70万人近くにのぼっています。半分が非常勤職員という部署も珍しくなく、公共サービスを守るためにも、賃金の引き上げなど非常勤職員の劣悪な労働条件の抜本的改善が急務です。


《今でも足りません》

●教職員 EU水準には36万人が必要

●消防士 消防力の整備指針にたいし消防士5万人が不足

●労働基準監督官 監督官3000人。事業所を毎日一つ回っても3.7年かかる

●下請け代金検査官 84人。事業者を毎日一つ回っても7.4年かかる


共産党 「天下り」禁止、人員確保掲げる

 日本共産党は、政官業の癒着をただすために、「天下り」と企業・団体献金をきっぱり禁止することを主張。国民サービスを守るために必要な分野に人員を確保し、非常勤職員の労働条件を抜本的に改善することを掲げています。公務員が「全体の奉仕者」として働けるようにするために、はく奪されているスト権など労働基本権の全面回復を訴えています。





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