2010年7月3日(土)「しんぶん赤旗」

民主党がたくらむ

比例80削減の危険


 参院選後の衆院比例定数80削減を声高に言い始めた菅政権・民主党。「参院で過半数をいただければ民主党だけでも議員定数の削減ができる」(枝野幸男幹事長)としており、今回の参院選で消費税増税に反対するとともに、増税の布石である比例削減を許さない審判を下す必要が差し迫っています。


民主党案は比例限定 完全小選挙区制狙う

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(写真)衆院比例定数80削減を明記した民主党の参院選マニフェスト

 2009年総選挙結果で試算すると、比例定数80削減が強行されれば、民主党だけで衆院議席の68%、3分の2以上の議席を得ることになり、参院で法案が否決されても民主党単独で再議決を強行できることになります。

 そうなれば、消費税増税や米軍基地押し付けなど民主党政権が進めようとしている重大問題が問答無用で通ることになりかねません。

 しかも、民主党は80削減にとどまらず、衆院での完全小選挙区制を狙っています。

 民主党が比例定数80削減をマニフェストに初めて掲げた03年総選挙で、当時党代表だった菅直人首相は「将来的には単純小選挙区だけの定数300もありうる」(同9月3日)と述べ、比例80削減が完全小選挙区への一里塚であると語っています。

 比例定数を標的にするのはなぜか。同党の安住淳選対委員長は05年総選挙のさい、「少数政党に鼻面を引き回されて、本当に公正なのか」(同8月25日、石巻青年会議所主催の公開討論会)と発言。政権交代直後に岡田克也外相(当時幹事長)も「比例を中心にすると結局は第3党が主導権を持つことになって、かえって民意をゆがめられる」(09年9月6日のNHK討論)と、少数政党の締め出しをあけすけに語っています。

 今回の参院選でも、自民党や公明党、みんなの党、三つの新党が国会議員定数削減を競い合っています。しかし、「比例定数」の削減に限定して主張しているのは民主党だけです。

「削られる」のは議員ではなく民意

 民主党は「国民に厳しいこと(増税)をお願いする前に、国会議員自ら身を削る」などと、比例定数削減を合理化します。しかし、比例定数削減で「削られる」のは、国民の民意なのです。

 「議員を減らして財源を削減しても、民意が反映されなくなれば元も子もない」。「朝日」6月29日付「声」欄に、高校生の投書が載りました。「(比例削減は)事実上の少数政党、少数意見の抑圧ではないのか」「国会議員を減らすと、国民の意見が国会に届きにくくなるのではないか」とのべています。

 「信濃毎日」6月28日付社説は、「国会議員の数は少なければいいというものではない。定数を減らすと、声の小さな人たちの利害を国政に反映させるのがどうしても難しくなる」と論じています。

 国会議員は、国民と国会をつなぐパイプです。その数を少なくすれば、民意を国会に届けるパイプが細くなるだけです。

 そもそも日本の国会議員数は、衆参合わせて722人、人口10万人あたりの議員数は0・57人で、人口比で比較すれば世界でも最下位の部類に属します。人口1000万人以上の国で二院制を採用している国は世界で41カ国ですが、人口10万人あたりの下院(衆院)議員数は、日本は下から9番目の33位。G7(主要7カ国)で比較した場合でも、連邦国家のアメリカを除けば日本は最下位です。

ムダ削減を言うなら政党助成金撤廃こそ

 「ムダづかいを根絶」「政治家自ら身を切る」というなら、政党・政治家が真っ先に「切る」べきは、政党助成金です。毎年320億円もの税金を日本共産党以外の政党が分け取りしています。

 民主党の政党助成金の依存ぶりは他党に比べて際立ち、実に本部収入の83・6%を占めます(08年)。自民党は51・4%、公明党は18・8%、社民党は51・1%です。

 支出でも民主党は選挙関係費、宣伝事業費、購読料を取るはずの機関紙誌の発行経費まで100%政党助成金を充てています。日常の活動も選挙活動も国民の税金に頼りきりの「国営政党」となっているのです。

 仮に国会議員を80人減らしても、国会議員の歳費、立法事務費、秘書給与など56億円の削減にしかなりません。政党助成金320億円は、国会議員450人削減に匹敵する金額です。

 巨額の税金を政党が山分けする“既得権”には一切手を触れずに、民意を反映する比例定数を削減するのは許されません。

グラフ

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比例削減突出提案に各党からも異論の声

 比例削減を突出させた民主党案にはメディアや定数削減を主張する他党からも異論が出ています。

 愛媛新聞は、「各党は国会議員の定数削減を競い合う」としたうえで、「議員削減は、民意を削る荒療治」と批判。「本来、政治は全国民がかかわるのが理想だ。1億2751万人が集まれる議場がないから、代表を国会に送る。定数を決める客観基準は人口比だ。いざ減らすとなると、人口が少ない地方の選出議員から削られる」とのべています。

 また、「少数政党に不利な比例の部分だけ切るのは反対。共産党も社民党も民意があるから出てきているのだから」(自民党・石原伸晃組織運動本部長、6月26日放映の民放テレビ)、「民意を正確に議席に反映するのは比例区だ。比例区を減らすのではなく、(選挙区を全廃して)すべて比例区にすればいい」(みんなの党・渡辺喜美代表、「朝日」6月26日付)などの意見も出ています。





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