2010年6月30日(水)「しんぶん赤旗」

主張

野球賭博処分

疑惑解明が尽くされていない


 大相撲の現役の力士や親方が野球などの賭博に手を染め、社会から一掃が求められている暴力団とのつながりが指摘された角界(相撲界)の賭博汚染をめぐり、日本相撲協会が関係者の処分を求めた特別調査委員会の勧告をほぼ受け入れるのと引き換えに、名古屋場所開催の方針を決めました。

 賭博汚染の調査はまだ道半ばです。賭博を名乗り出た関係者を処分するだけでなく、相撲協会がみずから疑惑を徹底解明し、反社会勢力との癒着をこんどこそ断ち切るかどうかが問われます。

「処分」でも疑惑は残る

 相撲協会の特別調査委員会が勧告し、理事会が基本的に受け入れた処分案は、決して軽いものではありません。調査委員会が懲戒を求めた大嶽親方(元貴闘力)と大関琴光喜は除名または解雇、時津風親方(元時津海)は降格以上の処分となるのをはじめ、賭博に関与した力士13人が謹慎となり名古屋場所を休場、武蔵川理事長や弟子が賭博に関与した10人の親方なども謹慎となります。場所が開催されても幕内や十両の取組が減り、理事長以下要職にいる親方の謹慎で、場所の運営などにも支障が出るのは避けられません。

 処分がかつてなく大規模なものになったのは、角界の賭博汚染の深刻な広がりと、暴力団の影響を一掃するよう求める世論の反映です。にもかかわらず一件落着と呼べないのは、これで疑惑がすべて解明され、ウミを出し切ったとはとうていいえないからです。

 なにより今回の処分は、力士や親方の「自己申告」にもとづくものです。黙って隠せば処分されないというのでは、あまりに不公平です。調査委員会は今週末までに約1000人の協会員全員に調査票への回答を求めています。もしその過程で新たな関与者が明らかになればどうするのか。いったん場所の開催を決めておいてさらに処分が追加されれば、混乱が広がるだけです。賭けマージャンなど野球以外の賭博が事実上不問というのも腑(ふ)に落ちません。

 調査委員会が早々と、力士の側には暴力団が関与しているとの自覚がなかったと結論付けたことも大問題です。試合ごとに数百万円単位の金が動くといわれる野球賭博は、「胴元」や「中盆」と呼ばれる世話役が客を集め、勝った側の掛け金の一部が「寺銭」として暴力団などに流れます。関取や親方など長い経歴を持つ関係者がそうした仕組みも知らず、賭博に参加していたとは考えられません。

 野球賭博に絡んで琴光喜を脅迫したとして逮捕された元力士は暴力団とのつながりが指摘されています。「寺銭」を取られていた力士に「自覚がなかった」との説明で納得できるはずがありません。

暴力団との関係決別こそ

 野球賭博の問題だけでなく、先に明らかになった昨年の名古屋場所などでの「維持員」席の横流しなど、相撲界と暴力団との癒着は根深いものがあります。武蔵川理事長は調査委設置を決めた際の記者会見で「反社会的勢力との関係を断ち切る」決意を表明しました。求められるのは実行です。

 相撲界は「国技」と呼ばれ、長い間、各部屋中心の閉鎖的な社会となってきました。患部を開き、ウミを出し、病巣を取り、社会の風にさらすことなしに、プロスポーツとして再生はありえません。





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