2010年6月24日(木)「しんぶん赤旗」

主張

税制抜本改革

足りないのは消費税じゃない


 きょう公示、7月11日投票の参院選に向けて、菅直人首相が言明した消費税率「10%」への増税方針に国民の怒りが広がり、政権の支持率も急落しています。

 菅首相は22日の党首討論会で「消費税が足らないために…このままでは社会保障制度そのものが破たんする」とのべ、改めて消費税増税の必要性を強調しました。政府税制調査会の専門家委員会も同日、税制の「抜本改革」に向けた中間報告(「議論の中間的な整理」)をとりまとめ、首相の消費税増税論を援護しました。

法人税収は3分の1に

 社会保障の財源は法人税、所得税、消費税など税金と社会保険料で成り立っています。消費税が足りないから社会保障が破たんするという首相の発言は、消費税だけが社会保障の財源であるかのようにすりかえる偽りの議論です。

 国の税収は20年前の60兆円から37兆円(今年度予算)に大幅に減りました。法人税は18・4兆円から6兆円へ3分の1に、所得税も26兆円から12・6兆円へ2分の1に激減しています。他方で消費税は4・6兆円から9・6兆円へ倍増しました。足りないのは消費税ではなく法人税、所得税です。

 法人税と所得税が減った原因もはっきりしています。景気の影響とともに、最大の原因は法人税率と所得税最高税率の相次ぐ引き下げ、株式の配当・譲渡益の減税で大企業・大金持ちに大盤振る舞いしてきたことにあります。税収不足を改めるには大盤振る舞いを是正すべきです。

 民主党政権は参院選公約で法人税率引き下げを掲げ、経産省の「産業構造ビジョン」には法人税率の15%引き下げを盛り込んでいます。これでは、消費税増税分のほとんどが大企業減税に費やされます。消費税増税を財源にして法人税を減税せよという日本経団連の要求を丸のみした方針です。

 消費税は所得が少なく、社会的に弱い立場の人ほど重くのしかかる福祉破壊税です。価格に転嫁できない中小企業は身銭を切らされる一方で、価格にすべて転嫁できる大企業は1円も負担しない究極の大企業優遇税制です。

 消費税増税が社会保障のためでも財政再建のためでもなく、財界の要求を丸のみし、大企業にとことん有利な税制に「抜本改革」するためであることは明らかです。

実態に立脚した議論を

 政府税調の専門家委員会では注目すべき発言も出ています。

 「消費税は明らかに逆進的である」「税収の中で消費税が占める割合はすでに25%に達している。所得税や法人税の議論が先行すべきだ」―。「事業主の社会保険料負担は(国際比較で)かなり軽い」「法人税の負担と国際競争力についての神話をきちんと再検討する必要がある」「税負担と国際競争力を安易に結び付ける議論は、やめたほうがいい」―。

 税制の抜本改革というなら、こうした暮らしと経済、税制の実態に即した議論こそ真剣に深めるべきです。そうでなければ政府が「財政運営戦略」で示そうとしたように、消費税率は5%どころではない大増税になりかねません。

 国民の立場で大企業に堂々とものが言える日本共産党を伸ばして、財界の身勝手な要求を丸のみする政治に明確な審判を下そうではありませんか。





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