2010年6月23日(水)「しんぶん赤旗」

菅内閣 財政運営戦略を閣議決定

「税制の抜本的な改革」宣言


 菅直人内閣は22日、中長期を視野に入れた「財政運営戦略」を閣議決定し、「政権交代を機に、これまで成し得なかった税制の抜本的な改革を進め(る)」と宣言しました。菅首相は、すでに消費税率10%に言及しています。同戦略は、自民党政権時代ですらできなかった2けたへの消費税大増税を行う方向を示しました。

 同戦略は、「歳入・歳出改革」によって、2020年度までに国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化し、国内総生産(GDP)に対する公的債務残高の比率を安定的に低下させるとしています。

 「財政悪化の大きな要因」として同戦略が挙げるのが社会保障費です。社会保障費について「歳入・歳出両面にわたる改革」を行うとしました。大企業奉仕のために膨れ上がった財政赤字のツケを社会保障分野に転嫁する考えを示しました。

 11年度から3年間の歳出・歳入の大枠を示した「中期財政フレーム」では、(1)国債発行額の抑制(2)抜本的な財政「改革」(3)基礎的財政収支の改善目標の達成に向けて取り組む―としました。この3年間で消費税増税、法人税減税を実施する考えを示しました。

 さらに、「新たな減収を伴う税制上の措置については、それに見合う新たな財源を確保する」と明記。「中期財政フレーム」と整合性のとれた概算要求枠を各閣僚ごとに設定し、分野ごとの予算に上限を設ける考えを示しました。


解説

消費税増税と社会保障改悪の方向

 菅直人内閣は、大企業減税の財源づくりのために消費税増税を行うことを狙っています。菅内閣が22日に閣議決定した中長期を視野に入れた「財政運営戦略」は、具体的な税率こそ示さなかったものの、消費税増税の一方で、法人税減税を行う方向を色濃く示しています。

 消費税大増税を国民に押し付ける材料として持ち出してきたのがギリシャの財政危機です。しかし、海外投資家による国債保有額が国内総生産(GDP)に匹敵するギリシャと、その10分の1以下の日本とを同列に置くことはできません。巨額の財政赤字の拡大を放置することはできませんが、国民を恫喝(どうかつ)するためにギリシャを引き合いに出すのは、国民生活に責任を持つべき政権がやるべきことではありません。

 菅首相は財務相の時には、消費税増税について、「逆立ちしても鼻血も出ないほど、完全に無駄をなくしたと言えるまできたとき、必要であれば措置をとる」(1月21日、衆院予算委員会)と語っていました。今回閣議決定した、「財政運営戦略」は徹底した「歳出削減」を掲げました。

 かつて「歳出をどんどん切り詰めていけば、やめてほしいという声が出てくる。増税をしてもいいから必要な施策をやってくれという状況になってくるまで、歳出を徹底的にカットしないといけない」と語ったのは小泉首相(当時)でした。「財政運営戦略」はそのやり口をほうふつとさせます。(山田英明)





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