2010年6月14日(月)「しんぶん赤旗」
人道支援船襲撃
イスラエルは無法
国際的非難広がる
【カイロ=松本眞志】イスラエル海軍が今年5月、地中海の公海上でパレスチナ人道支援船団を襲撃・拿捕(だほ)して多数の死傷者を出した事件は国際社会に大きな衝撃を与えました。犠牲者9人のうち8人の死者を出したトルコでは大規模な抗議行動が広がり、同国のギュル大統領が「関係修復不能」と発言するなど、非武装の市民への残虐行為に対する怒りが域内外で強まっています。
襲撃されたのは、トルコ、ギリシャ、アルジェリア、スウェーデン船籍の6隻。イスラエルを含む40カ国のボランティア団体や個人600人以上が参加しました。最初にトルコ船籍の船団が5月22日に同国を出発し、キプロス、ギリシャで他国の船と合流。約1万トンの物資を積載してパレスチナ自治区ガザ地区海岸をめざしました。このときイスラエル政府は、同国海軍に支援船団のガザ地区への接近を防ぐよう命じたとされます。
■実弾も使用
31日にイスラエル海軍の高速艇とヘリコプターが支援船団を急襲し、支援船の乗組員とのあいだで衝突が起きました。イスラエル兵は非武装の乗組員に催涙弾だけでなく実弾も使用。抗議する乗組員には暴行を加えました。ギリシャ人活動家の一人は「非武装の市民が実弾で殺害された。(スタンガンで)電気ショックを加えられデッキまで引きずられた」と証言しています。乗組員に対してイスラエル領海に侵入したことを認めるよう強要したとの情報もあります。
事件の背景についてトルコ紙トゥデーズ・ザマンは6月5日、国内の世論調査の結果も示しながら、「(パレスチナ問題などで対立するトルコの)エルドアン政権を窮地に追い込むことがイスラエルの狙いだった」と報じました。
イスラエルのダニエル・レビ元中東和平交渉担当者は最近、イスラエル政府はこの問題で国際社会の反応を過小評価したと指摘。ユダヤ系米国人エドワード・ペック元モーリタニア駐在米大使は10日、クウェート国営通信に対し、「イスラエル政府はその侵略的姿勢を変えなければ破局を招くだろう」と警告しました。
事件直後の6月1日、国連安保理はイスラエル非難の議長声明を全会一致で採択。「国際基準に沿った迅速かつ公平で信頼できる透明性ある調査」を要求しました。このとき米国はイスラエル擁護に回り、声明案で示された「独立した調査」の文言から「独立した」の削除を要求しイスラエルによる調査にするよう圧力をかけました。
■追及やまず
一方、国連人権理事会は1、2の両日に緊急会議を開き、人権・人道法違反の有無を検証する国際的な独立調査団の派遣を賛成多数で決議しました。
問題追及の声はその後も広がり、当事国のイスラエル、ギリシャ、レバノン、パキスタンでデモや集会が行われました。アラブ連盟は2日の外相会議で、イスラエルに対する国際刑事裁判所への提訴、ガザ地区封鎖解除の国連決議を要求。イスラム諸国会議機構(OIC)は声明で、「最も強い表現で非難する」と宣言しました。
トルコのイスタンブールで7、8の両日に開催されたアジア相互協力・信頼醸成措置会議(CICA)の首脳会合では、イスラエルを除く加盟20カ国全部が同国を非難しガザ地区の封鎖解除を要求しました。